本編
色仕掛け。
ハニートラップとも言うよね。
やっぱ、男ってそういうのに弱いし、今までの歴史の偉人たちもトラップに引っかかって転落していった人も多い。
実はあたし、ある機関のエージェントってやつなのだ。
え? 馬鹿っぽくてそんなふうに見えない?
あははは。そうそう。そういうところが選ばれた理由なんだってさ。
相手も、まさか、あたしみたいな女がエージェントって思わないから油断するらしい。
確かに政治とか難しいこととかはわからないよ。
でもね、何を聞き出せばいいかとかは教えてもらえるから、あたしはそれを相手が言うように仕向けるだけ。
正直、相手から話を引き出すことはホント自信あるんだよね。
あたしってお店でもナンバーワンだからさ。
あ、お店ってキャバクラね。
でもホントはナンバーワンって言っても、繰り上がりでなったんだけどね。
あたしがお店に入ったときに、色々教えてくれた人がいたんだけど、その人がずーっとナンバーワンだった。
その人がある日、自殺しちゃって……。
だから、ずーっとナンバーツーだったあたしがナンバーワンになったってわけ。
その人はなんか悩んでたみたいなんだけど、あたしは気づくことができなかった。
それが今は、心残り。
って、話が逸れちゃったね。
あ、そういえば最近、キャバ嬢の自殺が続いてるんだってさ。
しかも、お店のトップの人たちが多いみたい。
男に捨てられたって話。
怖いよねー。
これ、オフレコなんだけど、実は今、指令が来てるんだよね。
相手は外国のスパイなんだってさ。
ま、あたしにかかれば聞き出すことなんて超ヨユーだよね。
あ、今日も来たみたい。
さっそく、指名されたし、行ってくるね。
これが、私がお店に入ったときから、面倒を見てくれた人が言ってたことです。
本当に素敵な人で、私の憧れでした。
でも、その人はそれから3ヶ月後くらいに自殺してしまいました。
終わり。
■解説
最初の語り部はハニートラップにかけるどころか、逆にトラップにかけられてしまった。
相手のスパイは夜のお店の女性から情報を得ていたのだ。
最初の語り部も情報を引き出すどころか、逆に引き出されてしまい、その後捨てられたことで自殺してしまった。