大食い

意味が分かると怖い話

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本編

「健康の秘訣は腹八分目にすることだよ」
 
これは、大好物の焼き芋を頬張りながら言った、私の親友の言葉だ。
 
でもその子はいつもなにかと物を食べてたし、ビックリするくらいたくさん食べる子だった。
でも考えてみれば、健康の秘訣を言ってるだけで、自分がそうしてるって言ってるわけじゃないから、別に嘘ってわけじゃないのかな。
 
その子は好き嫌いはなくて、何でも食べる。
それも美味しそうにたくさん食べる。
 
だから子供の頃は大人たちに気に入られて、よくご馳走してもらっていたようだ。
私はそれが羨ましいって思ってたけど、それよりも納得できないことが1つある。
 
それは全く太らないということだ。
 
あんなに食べてるのに全然太らない。
私の3倍は食べてるのに私より細い。
納得がいかない。
 
そんな彼女との付き合いは社会人になっても続いていた。
彼女の大食いは今も変わらない。
そして、なんとビックリしたのが、彼女は何と大食いのユーチューバーらしい。
 
その界隈だと割と有名みたいだ。
一緒に外食に言ったら、時々、彼女が声を掛けられるところを見ている。
 
そんなあるとき、彼女は大食いの大会に参加したいから、付き合って欲しいって言ってきた。
私はその大会に出れるわけがないし、一人で行けばと思ったんだけど、どうやらアメリカで開催されるから、行くのが不安らしい。
 
私も海外旅行に興味があったし、交通費は奢るって言われたから、有休をとって彼女に付き合ってアメリカに行った。
 
そして、大会当日。
彼女はものすごい勢いで食べ続け、そしてなんと優勝してしまった。
 
彼女が全力で食べたのを初めて見て、本当にビックリした。
よくあんなに食べれるなぁって。
いつも、一緒に外食するときは抑えていたんだなって思った。
 
大会が終わって、賞金を受け取った彼女。

「いやあ、さすが本場はみんな、食べる量が凄いね。ギリギリだったよ」
 
そう言って笑う彼女。
そして、町中を歩ていると、ふと路上で焼き芋を売っているのを見つけた。
 
「あ、焼き芋だ。……食べない?」
「え? でも、さっきギリギリって言ってなかった?」
「うーん。今日だけは健康の秘訣を破っちゃおうかな」
 
 悪戯っぽくそう言った。
 
 終わり。

■解説

語り部の親友はずっと健康の秘訣を守っていた。
つまり、本場の大食い大会を腹八分目ギリギリで優勝したことになる。

 

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