前人未踏

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本編

中世の大航海時代初頭。
様々な船乗りがまだ発見されていない未知の地を見つけるため、海へと乗り出した。
 
未知の地で金銀財宝を見つけ、大富豪になったという船乗りの噂は聞き飽きる程流れてきていた。
 
その噂を聞き、一念発起して船を購入して航海を開始した。
しかし、簡単に新しい島など見つけられるわけもなく、やがては交易船として一般的な航路を往復するだけとなる。
 
だが、それでも利益を上げることができ、乗組員を増やし船団として大きくしていくことに成功する。
 
そんなあるとき、男の船は嵐に巻き込まれ、いつもの航海ルートから外れて遭難してしまう。
数日海を漂流していると、遠くに島があるのを見つける。
明らかに地図にも載っていない島だ。
男たちはすぐに船を島へと向けた。
 
島に到着してみると、明らかに人の手が入っていないことを感じさせた。
少なくとも、文明は発達していないことがわかる。
前人未踏の島だということが証明されたようなものだ。
もし、先住民がいれば植民地にできるので、さらに莫大な利益が見込める。
 
男は船員を引き連れ、島の中を探索する。
すると、洞窟内に金銀財宝が置いてある場所を見つけた。
 
男は歓喜した。
これだけで十分な利益を得ることができる。
男は船へと戻り、船員たちに明日の朝に、運び出すことを告げた。
船員たちも大喜びし、その日は海岸で宴が開かれる。
 
宴が終わり、みんなが寝静まる中、男は海岸に寝ころんで星を見上げる。
そして、大富豪になる自分の未来を夢見て、眠りに落ちて行った。
 
終わり。

■解説

前人未踏の島であれば「金銀財宝」があるのはおかしい。
文明を持つ誰かが持ち込んだとしか思えない。
ということは、この島は既に誰かが見つけているということになる。
では、なぜ、「地図にも載っていない」のか。
それは、島を見つけたが、「戻っていない」ということが考えられる。
つまり、この島で死んでいるという可能性が高い。
また、財宝が「洞窟内」にあったというところから、「人間」の存在が疑われる。
おそらく、先人たちはこの島に到着し、先住民の手によって消されてしまっている。
語り部も例外ではなく、明日の朝を迎える前に、先住民の手によって消されてしまうだろう。

 

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