【意味が分かると怖い話】爪とぎ

意味が分かると怖い話

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■本編

私は猫を飼っている。

友達が拾ってきた猫を1匹引き取ったのだ。

 

生まれてから2ヶ月くらいの子猫はとても可愛らしくて、一緒に遊びだすと数時間はあっという間に過ぎてしまう。

うちの猫は比較的、大人しいらしく、他の猫と比べても鳴かないし悪戯もしないし、トイレも失敗しない。

 

ただ一点、困っていることと言えば、爪とぎだ。

色々な物で爪を研ぐ……というわけではない。

中には壁やソファーで爪を研ぐ猫もいるらしいが、うちの猫はそんなことはしない。

壁もソファーも綺麗なままだ。

どこも爪の跡なんてない。

 

問題なのは時間だ。

 

夜の2時か3時頃。

寝ているとカリカリカリカリと延々と爪を研ぐ音が聞こえてくる。

 

何かを催促するときに、爪を研ぐことはある。

餌が無くなったとか、水がないとか、トイレを掃除してくれとか。

 

だけど、夜の爪とぎのときは、何を催促しているのかがわからない。

起きて、電気をつけて見てみても、ご飯や水もあるしトイレだって綺麗な状態になっている。

単に爪を研ぎたいから研いでいるのかもしれないが、時間が長い。

30分くらいは平気で研いでいる。

友達に聞いてみても、普通は爪とぎなんて一瞬で1分もやらないそうだ。

 

なんで、あんなに爪を研ぐんだろう?

ちゃんと爪は切ったりしてるんだけど。

 

猫がうちに来てから、大体半年が過ぎた。

友達からもそろそろ去勢した方がいいと言われたので、動物病院に連れて行くことにした。

 

猫は去勢手術で一日、動物病院にお泊りすることになった。

急に家の中が静かになった気がする。

猫が来る前はこんなことを思ったことないのに。

 

でも、たった一晩の我慢だ。

明日には家に戻って来る。

 

私はいつもより早く寝ることにした。

丁度ウトウトしていた時だった。

遠くで爪を研ぐ音が聞こえる。

 

私は「あ、夜のご飯あげてなかった」と思って慌てて起きた。

キャットフードを出して、お皿に入れようとしたとき、猫は病院に預けていることに気づいた。

 

「早く帰ってきてくれないかな」

 

すごく猫が恋しくなった。

 

終わり。

■解説

猫がいないのに爪を研ぐ音が聞こえるのはおかしい。

つまり、猫がいなくても爪を研ぐ音が聞こえるということは、今まで爪を研いでいたのは猫ではないということになる。

語り部の家には猫以外の何かが住み着いているのかもしれない。

 

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