心電図

意味が分かると怖い話

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■本編

私はある大学病に、看護師として勤めている。
 
その大学病院には多数の入院患者がいるのだ。
毎日、入院してくる患者、退院していく患者、そして亡くなる患者。
 
そんな多くの人を、私は世話してきた。
 
今、私の担当に、5年前の事故から植物人間状態の患者さんがいる。
 
物凄く不謹慎だが、この患者は全く手がかからないので助かっているのだ。
1時間おきに、チラッと様子を見に行くだけ。
人工呼吸器に点滴、心電図を見て異常がないことだけを確認するだけなのだ。
 
この患者の家族も見舞いに来ることはない。
お金持ちの家のなのか、毎月、決まった日に入院費が振り込まれるらしい。
 
今日も私はその患者の病室の見回りをする。
 
いつもは数秒、覗くだけだったが、今日は違った。
なんと、心電図が異常を示していたのだ。
 
ピーっと心臓停止を示す音が響いている。
 
突然だった。
なにが原因でこうなったのかはわからない。
 
だけど、心電図が心臓停止を示している。
 
解剖をすれば原因がわかるかもしれないが、遺族の承諾がなければできない。
おそらく、遺族は解剖を希望しないだろう。
 
本当に不謹慎だけど、私はせっかくの楽だった患者が亡くなったしまったことがちょっと残念だった。
 
この患者の代わりに手のかかる患者が担当になったら嫌だなって思いながら、私は人工呼吸器と点滴を止めた。
 
そして、私は電話で先生を呼んだ。
10分後、先生がやってきて、死亡確認が行われた。
 
遺族に連絡したら、そっちで色々処理してくださいと言ってきた。
 
最後くらい会いにくればいいのに。
 
私はそんなことを思いながら、患者の遺体を綺麗に拭くため、服を脱がせた。
 
そして、そのとき、心電図が取れていることに気づいた。
 
終わり。

■解説

心電図が取れていたため、心肺停止を示していた。
そして、語り部は医者に見せる前に、人工呼吸器と点滴を切っている。
つまり、語り部が見つけたときは、その患者は生きていた可能性がある。
つまり、その患者を殺したのは……。

 

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