ヘアカット

意味が分かると怖い話

〈意味が分かると怖い話一覧へ〉

〈前の話へ:電磁石〉  〈次の話へ:アパートの部屋〉

本編

女の子なら、もう少し髪型に気を使った方がいいよ。
 
私が周りからよく言われる言葉だ。
私からしたら余計なお世話なのに。
 
お洒落なんかに興味ないし、髪も長いと何かと不便だから短い方が良い。
頭を洗うのも楽だし、すぐに乾くし。
 
以前、美容師さんに坊主にして欲しいと言ったら驚かれて、やんわりと断られてしまった。
 
そもそも、髪を切りに行くのも面倒くさい。
だから一気に短くして数ヶ月切らなくていいようにしたいのに。
 
私からしたら、みんな切ったかどうかもわからないくらいを毎月切るっていうのが理解できない。
 
いつも行っている美容院で、担当の美容師さんがしきりに髪が綺麗だ、もっと気を使えばいいのにと言ってくる。
美容院を変えるのも面倒くさいから我慢してたけど、あまりにもうるさいから変えることにした。
 
お客さんが多いところだと、何かと話しかけられるから、人があまりいないような変ぺな場所の美容院を選んだ。
 
そこは美容師さんが一人でやっているそうだ。
 
どんな髪型にするかを聞かれたので、とりあえずバッサリ切って欲しいと伝えた。
そしたら、何も言わず、ガンガン切ってくれて、逆に私はビックリした。
最初からここに通えばよかったなあと思ったくらいだ。
 
その美容師さんは自分から話すようなことはしないで、私の話を聞くことに徹してくれる。
こんな美容師さんは初めてだったので、私は何かと話していた。
 
そんな中で、ポロリと私はこんなことを言ってしまった。
 
「髪を切りに来るのが面倒くさいんですよね。もう髪を切らなくていいようになりたいです」
 
すると美容師さんはさらりと言った。
 
「できますよ」
「え? できるんですか?」
「はい」
「じゃあ、お願いします」
 
そう伝えると、美容師さんはバツンと大胆に切った。
 
終わり。

■解説

もう髪を切らなくていいようになるには、髪が伸びなくなればいい。
美容師は語り部の希望通り、二度と髪が伸びなくなるようにした。
つまり、美容師は語り部の首を大胆に切ったのである。

 

〈意味が分かると怖い話一覧へ〉

〈前の話へ:電磁石〉  〈次の話へ:アパートの部屋〉