【意味が分かると怖い話】刑務官

意味が分かると怖い話

〈意味が分かると怖い話一覧へ〉

〈前の話へ:指〉  〈次の話へ:冷凍倉庫〉

■本編

俺は刑務官をしているんだけど、上司の命令で執行担当にされたんだよね。
 
あれだよ。死刑執行のときにボタンを押すやつ。
いや、本当に勘弁してほしい。
 
別に執行担当を悪く言うってわけじゃないんだけど、俺には無理って話。
ボタンが5個あるから、誰が『そのボタン』を押したかわらかないようになっているんだけど、それでも俺には荷が重い。
 
人を殺したかもしれないなんて、たとえ可能性だったとしても耐えられる自信がない。
先輩とかに話を聞いたら、執行担当になるのなんか、全体の0.1パーセントくらいって話だよ。
 
あーあ。なんでそんなのに当たっちまうかな。
俺って昔から、変なところで運がいいというか、悪い。
 
なんとか代わってもらえないかと思って、同僚とかに頼んでみたけどダメだった。
こうなったら、当日は体調不良で休むしかない。
と、思っていたら上司に「当日休んだら、どうなるかわかるな?」と念を押されてしまった。
 
手当も出るし、なんなら俺がしばらく晩飯を奢ってやると上司から言われたけど、逆に俺が奢るから代わって欲しいくらいだ。
 
執行の前の日は、一睡もできなかった。
ウトウトしては、自分が押したボタンで執行されるという夢を見て起きる。
 
本当に俺は気が小さい。
よく刑務官になれたもんだと自分でも思う。
 
そして、当日。
ギリギリのところで俺はあることを閃いた。
 
それは『押したフリ』をするというものだ。
そうすれば、俺は確実に執行したとはならない。
 
良かった。
さすが俺。ナイスだ俺。
ギリギリでナイスな名案が浮かぶなんて。
自分で自分を褒めてやりたい。
 
そして、ついにボタンを押すように合図が出る。
 
俺はボタンを押したフリをした。
 
すると、もう一回押すように指示が出た。
 
終わり。

■解説

もう一度押すように指示が出たということは、執行がされなかったということになる。
つまり、語り部が『執行ボタン』だった。
語り部は100パーセント執行したくないと思い、不正をしたが、逆に100パーセント自分が執行したことになった。

 

〈意味が分かると怖い話一覧へ〉

〈前の話へ:指〉  〈次の話へ:冷凍倉庫〉