【意味が分かると怖い話】指

意味が分かると怖い話

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■本編

俺ん家は農家なんだけど、昔から何かとよく手伝わされていた。

 

大規模じゃなくて、家族でやるくらいの小さい規模だ。

繁忙期でも手伝いの人やバイトを雇うことなく、全部、家族だけで乗り切ってた。

だから、当然、俺もそのときは無理やり手伝わされてたわけで。

 

中学まではそれが本当に嫌で、よく親に「バイトを雇えばいいだろ」と言って反抗していた。

だけど、そのたびに「じゃあ、あんたの小遣いを0にして、その分で雇う」と言われて、何も言えなくなった。

 

高校に行くようになってからは、俺も周りも繁忙期は家の手伝いがあると割り切ってしまっていた。

繁忙期になると周りも気を使って遊びには誘ってこなくなった。

 

で、その頃になるとおじいちゃんが、そろそろ草刈機を使っての作業をやってもらうと言い出した。

 

ただ、この草刈機は危険で、下手をすると指を落とすなんてことも珍しくないとのことだ。

ゾッとする俺を見て、おじいちゃんが「大丈夫だ。家族全員、指を落としてる奴はいないだろ?」と言ってきた。

 

でも、「怖いという思いは決して忘れるんじゃないぞ」とも助言された。

だから、絶対に教わった使い方を破ることはしないと心に誓ったものだ。

 

だけど、どんな作業にも必ず慣れというものが存在する。

俺もその例に洩れず、面倒くさい手順を飛ばすこともするようになった。

 

そんなある日。

いつものように草刈機を使っていると、地面に指が落ちているのを見つけた。

 

小指だった。

切れ口がスパッと綺麗な断面になっている。

 

それを見て俺は血の気が引いた。

 

気を付けて作業しよう。

この日から俺はいくら面倒くさくても、手順を飛ばすことはしなくなった。

 

終わり。

■解説

語り部の家は農家だが、作業は必ず家族だけでやっている。

そして、家族全員、指を落としている人間はいない。

また、「綺麗な断面」と言っていることから、その指は「真新しい」ということである。

では、語り部が見つけた指は、一体、誰のものなのだろうか。

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