意味が分かると怖い話 解説付き Part361~370

意味が分かると怖い話

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覗き

最近、高性能の双眼鏡を購入した。
その双眼鏡は暗視機能も付いていて、暗がりでもバッチリ見える。

そして家はマンションの10階なので、家から色々なところを双眼鏡で見ることができるのだ。
 
普通だったら薄着の女の子を凝視なんてしたら、問題になりかねない。
でも、自分の家から双眼鏡で、道を歩いている人を凝視しても、誰にもバレない。
 
そんな感じで自分の家から色々なところを覗くのが趣味になってしまった。
本当にいい買い物をした。
 
そして、俺はある日、いつも夜の24時に着替えをする女の人を見つけた。
 
彼女はほとんど、家には寝に帰ってきているだけみたいだ。
だから、カーテンの開け閉めはせずに、ずっと閉めっぱなしなのだろう。
 
ただ、カーテンは完全に閉まってなく、その隙間から着替えが見える。
電気もつけていないので、まさか見られているとは思っていないのだろう。
いつも無防備に着替えている。

さらに彼女は生活が苦しいのか、部屋の中は荒れているみたいだった。
せっかく美人なのに、なんだか勿体ない。
 
俺はそんな彼女を覗くのが完全に日課になってしまっていた。
そんなある日のことだった。
なんと着替えている彼女と目が合ってしまったのだ。
 
慌てて俺は隠れた。
 
顔を見られただろうか?
俺はドキドキして2、3日は覗くのを止めた。

夜にコンビニに買い物に行った帰りに、なんとその人に会った。
そして、なんとその女の人はジッと俺の方を見てきたのだ。
 
ヤバい!
まさかバレてたのか?
 
そう思って硬直していたら、彼女は俺の方に向かって会釈した。
 
ホッとして俺も会釈する。
どうやら覗きはバレていなかったようだ。
 
終わり。

■解説

離れた場所から双眼鏡をつかって見ているので、見られているのはおろか顔を見られているわけがない。
なのに、女はなぜ語り部の顔を知っているのか?
もしかすると彼女は普通の人間ではないのかもしれない。

 

浜辺の家

お俺は小さい頃から、海辺にある自分の家が嫌いだった。
 
潮風でベトベトするし、夜も波の音がうるさいし、夏になれば1日中観光客が騒ぐし、ご飯は海鮮ものが多い。
そんな理由で、本当に家が嫌いだったのだ。
 
だけど、一つだけいい点がある。
 
それは、海がなんでも流してくれるということだ。
 
母親に怒られたくなくて、点数の悪かったテストを海に投げ込めば流してくれる。
イタズラで盗んだ、あいつの上靴も海に流してやったが、犯人は俺だとバレなかった。
弁当で嫌いな物が入っていたときは、残して、帰りに海に流した。
 
海は本当に偉大だ。
 
嫌いなあいつが飼っている犬が、俺の足を噛んだから殺して海に流してやった。
そのときも犯人が俺だと気づかれなかった。
 
高校の頃、彼女の浮気相手を殺して流してやった。
大学のときは妊娠した彼女を殺して流した。
社会人になってからはムカつく上司を殺して流してやった。
それからも、浜辺で騒いでる観光客を殺して流した。
今日も両親が旅行に行っている間に女を連れ込んだが、抵抗されたので殺して流した。
 
朝になると、なんか浜辺が騒がしい。
季節外れの観光客だろうか。
 
よし、そいつらも殺して流してやろう。
 
終わり。

■解説

最後、浜辺で騒がしかったのは浜辺に死体が残っていたため、警察が来ていた。
つまり、女は流れなかったということになる。
なぜ、流れなかったのか。
今までと違うのは、『両親』が旅行中に流しているということだ。
つまり、今までは海が流してくれていたのではなく、両親が死体を処理していたということになる。

 

アイドルのプロデューサー

その男は業界でも有名な敏腕のプロデューサーである。
その男がプロデュースしたアイドルは大人気になるのはもちろん、スキャンダルを起こすこともなかった。
 
逆にプロデューサーから首にされたアイドルは、その後、恋人が発覚したり薬をしていることが発覚したりなど問題を起こすことが多い。
 
そのことからも、そのプロデューサーの見る目が凄いという噂でもちきりだった。
 
見る目があるのはもちろんだったが、それ以上に下調べをしっかりするのがプロデューサーのやり方だった。
下調べは徹底的に行う。
 
成績や運動神経、歌のうまさはもちろんのこと、小さい頃からの習い事や恋愛関係のことも事細かに調べ上げる。
 
そして、その厳しい審査を潜り抜けた者をスカウトするのだ。
 
さらにスカウトしてから、最後の下調べを行う。
 
それは盗聴器などが仕掛けられていないか、というものだ。
プロデューサーは情報が何より大事だということを理解している。
それが漏れることは絶対に許さないのだ。
 
徹底的に家の中を、業者を使って調べ上げる。
 
それは既に所属しているアイドルが引っ越しなどをした後も徹底されるのであった。
これがこのプロデューサーのやり方である。
 
終わり。

■解説

アイドルの不祥事は、どんなに注意していても未然に防ぐのは難しい。
では、なぜ、このプロデューサーはそれができるのだろうか。
それは下調べや引っ越しの際に、盗聴器を仕掛けられているかを調べるのではなく、逆に盗聴器を仕掛けているのである。

 

親友

俺には小学校からずっと付き合いのある親友がいる。
あいつとはなんでも話し合える仲で、テストの成績や部活での悩み事、恋愛に関してもよく相談していた。
相談するたび、あいつは嫌な顔一つ見せず、ちゃんと真剣に相談に乗ってくれる。
 
俺にとってあいつは唯一無二の大親友といったところだろう。
 
今、付き合っている彼女だって、あいつの協力がなかったら絶対に付き合うことができなかったはずだ。
あいつには感謝してもしきれない。
 
それなのに俺は、彼女と些細なことがきっかけで、大ゲンカをしてしまった。
今までにないほど激しい大ゲンカだ。
もう修復不可能な状態だ。
彼女のことはあんなに好きだったのに、どうしてあんなことで怒ってしまったのか。
今考えてみてもわからない。
 
俺は後悔した。
でも、後悔したところで彼女は戻っては来ない。
もう、どうしたらいいかわからない。
 
こういうときはあいつに相談することしかできない。
俺は悪いとは思ったが、あいつに電話をしてすぐに家に来てもらった。
 
あいつは俺の話を、途中で口を挟まずに最後まで静かに聞いてくれた。
話を聞き終わると、あいつはわかったと静かに頷いた。
 
「全部、俺に任せておけ」
 
あいつはそういうとポケットから携帯を取り出して、電話を掛け始めた。
 
ああ…。ダメだ。
あいつは俺を裏切るつもりだ。
 
俺は電話をしているあいつを、後ろから血の付いた包丁で刺し殺した。
 
終わり。

■解説

語り部はつい、カッとなって彼女を殺してしまっている。
「修復不可能」というのは彼女の体のことで、「戻ってこない」というのは死んでいるからである。
親友は話を聞いて、警察に連絡した。
それを見た語り部は「彼女を殺した包丁」で親友を刺殺したのである。

 

犬派

私は昔から猫よりも犬が好きだった。
それは子供の頃から家ではずっと犬を飼っていたというのもあるんだと思う。
 
家族の中でも私が一番、可愛がっていたし、散歩や世話なんかも私が担当だった。
考えてみれば、いつでも私の隣には犬がいた。
 
実家を出て一人暮らしをして、会社に勤めるようになってからも犬を飼った。
ペットOKの賃貸を探すのも、仕事でヘトヘトになって帰ってきても散歩に行かないとならないのは大変だったけど、それでも犬を飼わないという選択肢はない。
 
でも、犬を飼うのに唯一躊躇うことがあるとするなら、それは寿命だ。
 
10年以上も可愛がっていた犬が死んでしまうと、もう本当に落ち込む。
仕事も1週間以上は手に着かないくらい精神的に辛い。
この前も13年間飼っていた犬が死んでしまった。
 
何とか精神的に落ち着くまで残っていた有休を使うことでやり過ごした。
 
こういうときには新しいペットを飼うに限る。
もちろん、以前飼っていた犬の代わりにはならないけど、幾分、心は癒される。
 
私は前の犬以上に可愛がっている。
ただ、前の犬よりも我がままなのが玉に瑕だ。
 
高いドッグフードをあげているのに、私のご飯に手を出そうとする。
散歩してても逃げ出そうとする。
何度躾けてもすぐ泣く。
 
まあ、こういう我がままなところも可愛いんだけどね。
 
もう寿命の心配もないし、本当に飼ってよかったと思う。
毎日が充実している。
 
終わり。

■解説

語り部は新しい『犬』ではなく、『ペット』と言っている。
そして、『寿命も心配ない』と言っていることから、飼っているのは『犬ではない』。
それなのに、与えているのは『ドックフード』である。
だが、そのペットは語り部のご飯を食べようとするということから、『人間の食べ物』を食べたがっていることがわかる。
つまり、新しいペットというのは『人間』だという可能性が高い。
人間をペットとして飼っているというわけである。

 

侵入者

最近、妙に視線を感じる。
なんか、いつでも見張られているような感じだ。
 
最初はストーカーかな? なんて思ったりもしたが、私なんかをストーカーするもの好きなんていないだろう。
でも、それを同僚に話したら、注意だけはしっかりした方がいいと言われた。
 
確かにその通りだ。
 
私は今まで面倒くさがってベランダの開けっぱなしだった鍵を始め、全部の窓の鍵をしっかり閉めるようにした。
それでも、やっぱり見張られている感じはなくならない。
 
警察に連絡しようかとも思ったけど、今のところ、まだ『そんな感じがする』だけなので、そんなことで警察に行っても門前払いにされるだろう。
 
でも、そんなある日。
家から帰ると、ベランダの外に覆面を被った男がいた。
 
私は今までのこの怒りが一気に噴き出し、気づいたらベランダに向かって走っていた。
鍵を開けてベランダに出ると、その男はここが2階なのにスルスルと壁を伝って逃げて行った。
 
悔しい反面、これではっきりと狙われていることがわかった。
警察に相談すると、見回りを強化してくれるらしい。
 
空き巣かもしれないとも言われて、今後も戸締りはしっかりとしてくださいと言われた。
家に侵入されなかっただけ、幸いだった。
まあ、確かにこのくらいのことじゃ、見回りを強化してくれるくらいが関の山だね。
 
色々、警察署で話をした後、家に帰った。
 
今日は疲れたから、シャワーを浴びて寝よう。
そう思って着替えをタンスから出そうとしたら、少し開いている。
 
あー、もしかしたら下着も盗まれたかもしれない。
最悪だ。
 
何か被害があったら連絡して欲しいと言われていたし、明日、もう一度警察に行こう。
 
そう考えて私は浴室へと向かった。
 
終わり。

■解説

語り部は『監視されている』感じと、『下着を盗まれたかもしれない』ということで、『家の中に侵入されている』と考えられる。
そして、覆面の男はベランダにいて、語り部は『鍵を開けて』ベランダに出ている。
つまり、覆面の男と家に侵入している犯人は別である。
もしかすると、侵入者はまだ家の中にいるかもしれない。

 

男子寮

高校は実家から離れた場所にあるため、俺は寮に入ることになった。
 
男子校だから、寮も厳しいだろうなと覚悟していたが、俺は寮長に気に入られたせいか、寮生活は苦にならない。
 
門限や私物の持ち込みなど、本当だったら怒られることでも見逃して貰える。
他の奴らからは少しやっかまれているけど、こればっかりは俺が悪いわけじゃないから開き直っている。
 
ただ、寮長に気に入られていることだけあって、何かとよく誘われる。
飯や自由時間、休みの日なんかも、誘われたりするのだ。
少し面倒くさいとは思うけど、ここで寮長に嫌われたらこの先の寮生活は悲惨なことになるだろう。
 
それに、俺自身、寮長と一緒にいることはそんなに苦にならないし、楽しいことも多いので嫌々付き合っているわけじゃない。
 
そして、その年の年末。
周りの寮生のほとんどは実家に帰るようだ。
 
俺も帰ろうかと思っていたが、寮長が「年末年始は管理人も寮にいないから、自由に過ごせるんだぜ」と言ってきた。
 
普段、寮ではできないこともできるらしい。
たとえば、バーベキューや鍋、夜更かし、寮内でかくれんぼ、探検などなど。
それで、寮長は俺も寮に残らないかと誘ってきたわけである。
 
その話を聞いて確かに楽しそうだったので、俺は年末年始は寮に残ることした。
 
寮に残る寮生は全員で5人。
寮長は他の3人には夜の点呼などもしないから自由に過ごしていいと伝えていた。
 
そして、年末年始。
 
周りはほとんど誰もいないので静かだった。
まさか寮の中でこんなに静かに暮らせるとは思ってもみなかった。
 
寮長も気を利かせてか、ほとんど誘いに来ない。
それもあり、その日、俺はダラダラと過ごしていた。
 
そして夜が来た。
昼間、寝ていたのにまだまだ眠い。
こんなにダラダラ寝られるのは、中学の時に実家にいたとき以来だ。
 
ウトウトとまどろんでいると、ドアがノックされた。
寮長だろうか?
そう思っていると「点呼なんだけど、起きてるか?」という声が聞こえる。
 
やっぱり寮長だ。
 
俺は返事をしようと思ったが、物凄く眠い。
だから寝たふりをすることにした。
 
すると、もう一回ノックされる。
 
それも無視する。
 
しばらく沈黙の後、ギイっとゆっくりドアが開いた。
 
終わり。

■解説

寮長は年末年始は「点呼を取らない」と言っている。
それに、「反応がなかったのにドアを開けて」いる。
そして、語り部は寮長に気に入られている。
寮内にはほとんど人がいない。
この後、語り部は寮長に襲われたのかもしれない。

 

緊急事態

それはまさに緊急事態だった。
 
俺はデパート内で強烈な尿意に襲われた。
すぐにトイレに向かおうとしたが、トイレは1階と3階にしかない。
 
今は2階。
駆け上がるよりも駆け下りる方が膀胱に良い気がして、1階に駆け下りる。
そしてすぐにトイレのマークの看板に沿って進む。
 
限界は近い。
 
ギリギリのところでトイレの入り口に入る。
が、しかし。
 
なんと人が並んでいる。
小便器に数人が列を作っていた。
 
万事休す。
 
だが、そのとき、個室が端の1つだけ空いていた。
 
大ではないが、今は緊急事態。
小でも個室を使わせてもらおう。
 
俺は列を外れ、個室のドアを開いた。
 
終わり。

■解説

小便器に列が出来ている中で、果たして個室が1つだけ空いているなんてことがあるだろうか。
そして、空いていたのは端である。
おそらくそこは用具入れの可能性が高い。
ギリギリ状態だった語り部はこの後……。

 

正当防衛

最近、女性を狙った変質者が出るらしい。
被害者は結構な人数になっていて、ニュースでも放送されているくらいだ。
 
ニュースに出ているコメンテーターは「一人で暗がりに行かないなど、自己防衛も必要」などと言っている。
正論だけど、それが出来れば苦労はない。
 
こっちには仕事もあるわけだし、駅から家までの間に街灯がないところだってある。
 
こういうときはいつも、なんで被害に遭いそうな側がわざわざ必死に注意しないとならないのかと思う。
悪いのは変質者なのに。
 
とはいえ、それも綺麗ごとだ。
こっちが悪くなくても、こっちが注意しないといけない。
 
なので、私は自己防衛としてナイフを持ち歩いている。
本当はスタンガンとかがいいんだけど、仕事が忙しくて、買いに行く暇がない。
 
犯人が早く捕まってほしいと思いつつも、今日も残業で終電ギリギリになってしまった。
 
人通りは当然、少ない。
というより、歩いているのは私一人だ。
 
恐らく狙われるのだとしたら、こういうタイミングだろう。
 
私は周囲を注意深く見渡しながら歩く。
すると、一人の男性が私の後をついて来ていることに気づく。
 
ヤバい。
 
私は走ろうとするが、足がもつれて転んでしまう。
 
その間にも男はドンドンと私に近づいてくる。
私は慌てて立ち上がり、早足で歩く。
 
すると後ろの男も早足になる。
 
そこで、普段は通らないような路地裏へと入ってみる。
普通の人なら、絶対にこんな道は通らない。
 
なのに男は普通に路地裏へと入って来た。
 
間違いない。
私を狙っている。
 
私は駆け出した。
男も走り出す。
 
男は後ろから「待て」みないなことを言っている。
 
必死に逃げるがその距離はドンドンと近くなっていく。
 
覚悟を決めるしかない。
 
私は自己防衛用に持ち歩いていたナイフを取り出す。
そして、立ち止まると、男は私の肩に手を置いた。
 
私は振り向きざまに男の腹にナイフを突き立てる。
 
男は血を吐いて、その場に倒れ込む。
 
危なかった。
ナイフを持っていなかったら、どうなっていたことか。
 
例え男が死んだとしても、正当防衛になるだろう。
 
そう思っていると、男の手に私の財布が握られているのに気づいた。
 
終わり。

■解説

男は、語り部が転んだ際に落とした財布を渡そうと後をついて来ていただけだった。

 

流れるプール

最近はずっと仕事が忙しく、休みが取れなかった。
だが、ようやくお盆に少しだけ休みが取れたので、久しぶりに旅行へと連れて行くことにした。
 
流れるプールがあるレジャー施設。
プールで戯れる姿を見て、俺は連れてきてよかったと思った。
 
だが、さすがお盆ということだけある。
家族連れの客が多く、人がごった返していた。
 
そして、流れるプールで遊んでいると流れてしまい、案の定、逸れてしまった。
 
心配で探し回っていると、いきなり後ろから「パパっ!」という声がして抱き着かれた。
 
振り向くとそこには娘の姿があった。
 
娘の姿を見て、俺は血の気が引くのを感じたのだった。
 
終わり。

■解説

語り部は不倫相手とレジャー施設に来ていた。
後ろから娘が飛びついてきたということは、母親、つまり語り部の妻がいる可能性が高い。

 

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