自殺の名所

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■本編

そこは知る人ぞ知る、自殺の名所だった。
ビルの屋上で、非常階段から入ることができるのだ。
 
実は夜景が綺麗なところでもあって、飛び降りる前に夜景が楽しめるのだそうだ。
 
まあ、自殺するほど追い詰められた人が、夜景を楽しむなんてことはしないだろうけど。
 
私はこの場所は話だけは聞いていた。
自分はここを使うことなんかないだろう、と思っていた。
 
でも、人生というのは何が起こるかわからない。
失恋や会社の失敗、私生活でのトラブル。
そんな些細なことが積み重なって、私は何となくここに足を運んだ。
 
このまま生きていても、良いことなんてない。
飛び降りてしまえば、全てが終わる。
 
そんなことを考えていると、なんだか下が騒がしい。
下を覗いてみると、何やら人が集まっていた。
 
私が自殺しようとしているのを見て、騒いでいるのだろうか?
 
私はなんだか馬鹿馬鹿しくなって、飛び降りるのを止めた。
 
非常階段を使って下に降りると、警察官がいて、私は逮捕された。
 
終わり。

■解説

語り部は騒がしくなった後から下を覗いている。
なので、語り部が自殺しようとしているのを見て騒いでいるわけではない。
 
ここは自殺の名所である。
つまり、語り部の前に誰かが飛び降り、それで騒いでいたのだ。
飛び降りた屋上から語り部が顔を出したため、語り部が突き落としたと間違えられたというわけである。

 

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