本編
誰でも一回は聞いたことがある都市伝説。
マンションで一人暮らしをしている女性の部屋に友人が泊まりに来た。
女性はベッドの上で、友人は床に寝る。
夜、突然、友人は女性を起こして、コンビニに行こうと言い出す。
最初、女性は断るのだが、あまりにも友人がしつこく言うので、ついて行くことに。
外に出ると友人が、「ベッドの下に包丁を持った男がいる」と言ったのだった。
こういう話。
ね?
聞いたことあるでしょ?
私もね、もちろん聞いたことがあった。
たぶん、学生の頃だったかな。
聞いたときは怖くて、実家暮らしでよかったと思った記憶がある。
そんな私も大学を卒業して、就職し、一人暮らしをするようになった。
仲がいい友達もでき、休みになれば泊まりに来たりもする。
そんなあるとき。
泊まりに来ていた友人が、深夜に私を起こした。
青ざめた表情で、「コンビニに行きたいんだけど、一人じゃ怖いから一緒に行こう」って。
普通だったら、「子供じゃないんだから、一人で行ってきなよ」というところだけど、友人があまりにも切羽詰まった顔で言うもんだから、私はそそくさと着替えて、友人と一緒に外に出た。
すると部屋を出た友人がこう言った。
「あんたのベッドの下から目が見えた。あれ、絶対、人だよ。変質者がいるのかも。警察に連絡しよ」
私は友人には悪いが、思い切り笑ってしまった。
まさか、自分があの都市伝説をやられるなんて思ってもみなかった。
私が笑ったことに、友人はムスッとする。
だけど、私はごめんごめんと謝りながら、こう言った。
「大丈夫だよ。私のベッド。床との隙間が3センチしかないんだから」
そう。
私はベッドの下の都市伝説が怖くて、そういうベッドにしているのだ。
「あ、そっか! たしかに!」
友達もゲラゲラ笑う。
安心した私たちは部屋へと戻った。
終わり。
■解説
友人はベッドの下に目があるのをはっきり見ている。
しかし、語り部はベッドと床との間は3センチしかないのだという。
もしかすると、語り部の部屋には包丁を持った男はいないが、人ならうざるものがいるのかもしれない。