本編
世界的な規模でウィルスが多様化し蔓延するようになった。
さらに最近では人間のそもそもの抵抗力の低下が謙虚になってきた。
そのせいなのか、人々はちょっとした風邪でも無視できなくなり、ついに死因の第一位がウィルス性疾患となってしまう。
この状況を世界各国が危機に感じ、早急に対策を打とうと試みる。
そして誕生したのが、人の害となる、どんなウィルスでも体の中から消し去るという万能薬のような薬だ。
これにより世界でウィルス性の病気で亡くなる人間はほぼいなくなった。
そんな中、男はウィルス性の風邪にかかってしまう。
男には妻も子供もいた。
絶対に今、死ぬことはできない。
男はそう考え、ありとあらゆる民間療法を試してみるが、治ることはなかった。
日に日に、男は弱っていく。
男は妻に説得され、一縷の望みを持って、どんなウィルスでも消し去る薬を服用した。
数日後。
男の体の中からウィルスが消え去った。
終わり。
■解説
人の害となるウィルスを消し去ると言っているが、『治す』とは書かれていない。
また、男は最後まで、この万能薬を飲むことを避けていた。
つまり、この万能薬を飲むと、ウィルスを消してくれるが、その強力な殺菌作用で飲んだ者を死に至らしめる可能性がある。
この男も、最後はウィルスが消えたとしか書かれていないところを見ると、薬によって死んでしまった可能性が高い。