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意味が分かると怖い話

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本編

最近、僕に彼女が出来た。
18年生きてきて、初めての彼女だ。
 
入学以来、ずっと好きだった子に、高校卒業するときにダメ元で告白したらOKを貰えた。
実は向こうも、僕のことがずっと好きでなかなか告白できなかったらしい。
 
こんなことなら、もっと早く告白していればよかった。
 
でも、そんなこと言ってても始まらない。
過去は変えられないのだ。
 
だから、高校で楽しめなかった分、大学生活は彼女と一緒に楽しむつもりだ。
 
僕は自分のことで手一杯だったけど、彼女はなんと僕の志望していた大学をこっそりと調べ、僕と同じ大学に合格していた。
だから、4月からは彼女と一緒に大学ライフが送れるというわけだ。
 
正直に言うと、もし、事前に彼女が同じ大学に行くって知っていたら、僕はきっと彼女に告白しなかっただろう。
まだ4年チャンスがあるってね。
 
ホント、知らなくてよかった。
結果オーライだ。
 
僕はあまり自覚がないんだけど、周りから見ると僕らはラブラブすぎて痛いなんてからかわれる。
 
メールが来てから3分以内に返すって普通だと思うんだけど、周りはどうやら違うらしい。
僕もそうしているし、彼女もちゃんと3分以内に返してくれる。
 
だから、僕はいつ彼女からメールが来てもすぐに返せるように、トイレにもお風呂にもスマホを持ち込んでいるのだ。
それが苦っていうなら、問題かもしれないけど、僕としては彼女とやり取りできる嬉しさの方が勝ってるから、全然、嫌だとは思えない。
 
ただ、彼女の負担にもなりたくないから、午前2時から午前7時までは送らないようにしている。
あとは、バイト中と講義中とかね。
 
今日も朝、起きてさっそくメールを送る。
 
『おはよう』
 
すると数秒後に返事が来る。
 
『おはよう。今起きたの?』
『うん。今日は二限目からだから』
『そっか。私もそっち、受講すればよかったな』
『今、大学に向ってるの?』
『うん。ちょっと遅刻しそうで急いでるんだ』
『珍しいね。寝坊?』
『うん。開かずの間で引っかかったら遅刻するかも』
『ああ、あの凄い長い踏切ね。あそこヤバいよね』
『10分は開かないんだもん』
『あそこ、踏切締まるのも遅いよね』
『そうそう。あれ、絶対、事故とか起きちゃうよね』
『そういえばさ、今日もお昼、一緒に食べれる』
『うん。いいよ。今日は3限目までしか講義ないし』
『ホント? じゃあさ、今日のお昼はラーメンにしない? 久しぶりにこってりとしたの食べたくなっちゃってさ』
 
ここで彼女の返信がピタリと止まった。
10分以上待っても、返事が来ない。
 
既読になってるのに。
おかしいなぁ。
 
もしかして、ラーメン、嫌だったのかな?
 
終わり。

■解説

いつも3分以内に返事を返すのに、突然、返事が来ないと言うのはたとえ怒ったとしてもおかしい。
そして、やり取りの中で、「危ない踏切」があることが出てきている。
その踏切につかまると遅刻すると言っていることから、「これからその踏切を通過する」ことになる。
さらに彼女はやり取りをしながら歩いている。
危ない踏切にさしかかり、やり取りに夢中で電車と接触した可能性が高い。
既読になっているのも、スマホを開いたままの状態で事故に遭ったと考えると説明がつく。

 

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