本編
男は美食家だった。
美味しいと噂の店があればどんな手を使ってでも行ってみるし、美味しいものに金に糸目をつけない。
そんな男はほとんどの食べ物を食べてしまったし、有名なお店は全て行ってしまった。
だが、男は満足できなかった。
もっと美味しい物を食べてみたい、まだ食べたことのない美味しい物を食べたい。
そんな思いが男の中に強く残っている。
そこで男はいわゆるゲテモノ料理に手を出し始める。
ゲテモノ料理は外れは多いが、その中で美味しい物を見つけたときの感動は、男をさらにその世界へのめり込ませた。
男はアングラな世界で有名な、あるツアーに参加する。
それはアマゾンのジャングルに入り、そこで様々な生き物を食べるというものだ。
もちろん、それは表の世界では食べられない、天然記念物や絶滅危惧種の生き物も食べることができる。
男は胸に期待を膨らませながら、ガイドと共にジャングルの奥へと入っていく。
ツアーは高額だったが、ガイドと二人きりなので、他のツアー客と食べ物を取り合うということもない。
美味しい物を最優先で食べさせて貰える。
とはいえ、ジャングル内は歩くのさえも苦労する。
ガイドについて行くのでやっとだ。
でも、その分、空腹になり、食べ物を食べた際は本当に美味しく感じる。
いつもなら遠慮しそうな虫も食べることができた。
そして、1日目の夜。
ガイドは男に「生き物で一番美味しい部位は脳みそだ」と話した。
ガイドは男に、明日、生き物が用意できたら、脳みそを食べさせてくれると約束する。
男はそれを楽しみに眠りについた。
次の日。
ガイドは生き物を用意できたが、男は脳みそを食べられず、ガイドが脳みそを食べてしまった。
終わり。
■解説
用意ができた生き物は、男だった。
つまり、男はジャングル内で命を落とし、死んでしまった。
ガイドはあげる人がいなくなったので、男の脳みそは自分で食べてしまったということになる。