返納

意味が分かると怖い話

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■本編

私は去年、免許の返納をした。
70歳になったので、子供や孫から説得されれば仕方ないことだ。
 
とはいえ、今まで車で買い物してたので、ちょっとした買い物も一苦労になる。
週末の買い物のために、スーパーに行く。
頼まれていたものを買い、商品をマイバックに入れていると、隣に私と同じくらいの年の男性がやってきて、同じように買った商品を袋に入れ始めた。
 
「結構な量ですね」
 
男が私の買ったものの量を見ながらつぶやくように言った。
 
「ええ。一週間分ですからね。2人分だとしても、結構な量になるんですよ」
「私もです。買い物一つで大変ですよ。安いからここまで来ないと、妻に文句言われますし」
「うちも一緒ですよ」
「奥さんは一緒じゃないんですか?」
「車で来てたときは一緒だったんですけどね。返納して、バスになってからは一人ですよ」
「あー。なるほど。返納したんですね」
「ええ。駐車するときに、結構、車を擦るようになりましてね。子供たちに返納しろって言われて……」
「ああ、わかります。私も、2年前に、小学生を轢きそうになりましてね。運転に自信がなくなりましたよ」
 
そのあと、10分ほど雑談をして、私たちは会釈をして別れた。
私はバス停がある出口に向かい、男は逆方向の出口へと向かった。
 
終わり。

■解説

男はバス停に向かっていない。
つまり、免許の返納をしていないことがわかる。
2年前に小学生を轢きそうになっているのに、返納をしていないことから、今後、事故を起こす可能性は高い。

 

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