営業

意味が分かると怖い話

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■本編

男が休日の深夜に寝ていると、突然、営業マンがやってきた。
 
男はちょうど、熟睡に入ったところを起こされ、不機嫌だった。
しかし、営業マンはそんな男の様子に気にすることなく、ペラペラとしゃべり始める。
 
「最近、不景気ですけど、どうですか? 人生、楽しめてます?」
「……余計なお世話だよ。早く帰ってくれ」
「そんなことを言わないでください。……実は、ノルマに達してなくて、なんとかお願いできないでしょうか?」
「そんなのあんたの事情だろ? 俺には関係ない」
「まあまあ、そんなこと言わず」
 
営業マンはそう言うと、色々なチラシを出してきた。
 
「これ、ハワイ旅行のプランです。どうです? 最近、海外旅行に行ってますか?」
「……そもそも、海外になんか行ったことないよ」
「なら、この機会にどうですか? 旅費は全部、こちらで出しますので」
「でも仕事があるから、行けないって」
「その辺も、ちゃんとフォローします。あなたに不都合は出ないようにします」
「でもなぁ……」
「あ、もしかして、現地で遊ぶお金がないとかですか? なら、こっちで100万出します。これでどうでしょうか?」
「……あのさ、ここまで好条件だと、帰って怪しんだけど」
「そんなことありませんよ。一生分の楽しさを味わうと思えば、安い物じゃないですか?」
「うーん」
「わかりました。じゃあ、他の人のところへ行きます」
「あー、待ってくれ! わかったよ。本当にハワイ旅行と100万をもらえるんだな?」
「もちろんです」
 
男は営業マンの言う通り、契約をした。
 
そして次の日。
男の口座に100万が振り込まれ、飛行機のチケットとホテルの予約のチケットが届いた。
 
男は会社には連絡せずに旅行に行った。
そして、旅行から帰ってきても、営業マンの言う通り、男にとって何も不都合はなかった。
 
終わり。

■解説

異常なまでの好条件と、『深夜』にいきなり営業にくる人間はいない。
つまり、この営業マンは人間ではなく、死神。
男は好条件の引き換えに、魂を渡してしまった。
また、会社に関しては男は死んでしまうので、男にとってなにも不都合はない。

 

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