骨董品

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■本編

男の家は代々、骨董品を扱うお店をやっていた。
男も当然のことながら、このお店を引き継ぐことになる。
 
幼少期より、父親や祖父から目利きを叩きこまれていた。
その甲斐もあり、騙されたり、いい品を見逃すこともなく、店は順調に売り上げを伸ばしていった。
 
そんなあるとき、ある客が古く、珍しい茶器を店に持ち込んできた。
その客は、その茶器が代々受け継がれた由緒正しいものだと説明し、普通であれば300万はくだらないと話す。
 
男はそれが本物かを調べようとしたとき、客はすぐに金が要ると言い、すぐに買い取ってくれないなら、他に持って行くと言い出した。
 
男の目利きでは本物だと思うが、確証は持てない。
だが、今を逃せば、こんないい物はなかなか手に入らないだろう。
そう考えた男は即決で、300万で買い取った。
 
そして、それから1週間後。
今度はある老人が店にやってきた。
その老人も骨董品を扱っていて、その道、60年のベテランだと話す。
テレビ番組にも出演したのだが、知らないかと尋ねられたほどだ。
 
そんな目利きのベテランに、男は緊張しつつも、1週間前に手に入れた茶器を見せた。
男の目利きでは350万くらいはつくだろうと見込んだ上での提案だった。
 
だが、男の、その判断は間違っていた。
 
その茶器を老人に見せると、その老人は頭を抱えてしまった。
老人によると、この茶器は精巧な贋作なのだという。
それは精巧なのだが、値段としては二束三文にしかならないと老人は話す。
 
老人は事細かに、茶器の偽物を示す証拠をあげていく。
男はそんなことは聞いたこともなく、自分の知識のなさを恥じた。
 
老人は男に対して、この店にあるものはどれも良い物で、そんな店が損をするのは忍びないと言い出した。
 
老人はその偽物の茶器と、他の骨董品を纏めて、200万で買い取ってくれるのだという。
茶器が二束三文だと考えれば、他の骨董品を2倍以上の価格で買ってくれるということだ。
 
男は老人に感謝しつつ、200万で老人に茶器と他の骨董品を売った。
これで、茶器を買った分は損はしたが、随分と補填できた。
 
男はホッとして、これからはもっと目利きを磨こうと心に誓う。
 
だが、それから数ヶ月後、男はニュースを見て驚く。
なんと、あの老人が逮捕されたというものだった。
 
終わり。

■解説

老人の方が嘘をついている。
男は老人の肩書を信じたことにより、自分の目利きを信じられなくなっていた。
日本人は肩書に弱いという隙を突いた犯罪をしていた老人は、警察に逮捕されてしまった。

 

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