拉致監禁

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本編

長年不景気が続いているせいか、最近、やたらと物騒な事件が続いている。
窃盗、強盗、殺人。
あげればキリがないくらい、連日、事件の放送が流れている。
 
だけど、俺にとってそれはテレビの中の話で、実際に自分の身に起きるなんてことは考えもしなかった。
 
ある日、友達と買い物のために2人で歩いていたところ、突然、覆面を被った男が襲い掛かってきて、友人をスタンガンで気絶させた。
焦る俺は何もできず、立ちすくんでいると、覆面の男は俺にもスタンガンを当ててきた。
 
気が付くと、窓もなにもない、倉庫のような部屋に押し込められていた。
部屋の中には友達と2人。
 
別に縛られてはいないが、ドアには鍵がかかっているので外には出られない。
 
スマホを出してみたが、スタンガンのショックのせいか壊れていた。
 
「お前のも壊れた? 俺のもだ」
 
そう言って友達もスマホを出す。
 
「まあ、壊れてなかったら外に連絡もできるし、残してあるってことはそういうことだよな」
 
友人が溜息を吐く。
 
「……やっぱ、俺を狙ったのかな?」
 
俺がそう言うと友達は苦笑いする。
 
「お前んち、金持ちだもんな」
「けど、本当に狙われるとは思わなかった」
「拉致監禁なんて、普通は想像できないもんな」
「ああ」
 
そのとき、俺の腹がグーと鳴った。
そういえば、朝から何も食べてなかった。
 
今が何時かわからないが、ものすごく腹が減っている。
 
「何か食べるものでも持ってきてくれないかな」
 
緊張感がないと思うかもしれないが、それくらい腹が減っていた。
 
「誘拐ってことは殺す気はないってことだろ。たぶん、飯くらいは出してもらえると思うけどな」
「……リクエストとか聞いてくれるかな?」
「お前、緊張感なさすぎ」
 
思わず友達が噴き出した。
 
「……身代金が目的ってことでいいんだよな?」
「たぶん」
「なんか変な国に売り飛ばされたりはしないよな?」
「それなら、もっと違う人間を狙うだろ」
「そうかな?」
「どっちにしても、もうすぐ24時間経つ。そろそろ警察だって本腰で捜査を始めるさ」
「そ、そうだよな」
「だから俺たちは大人しくしてた方がいいと思うぞ」
「そうだな」
 
俺は友達の言う通り、ただひたすら静かに待ち続けることにした。
 
終わり。

■解説

なぜ、友人はもうすぐ24時間が経つことを知っているのか?
語り部は時間がわからないと言っているので、その部屋には時計がないはずである。
もしかすると、友達は誘拐犯の一味なのかもしれない。

 

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