意味が分かると怖い話 解説付き Part241~250

意味が分かると怖い話

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既読

最近、僕に彼女が出来た。
18年生きてきて、初めての彼女だ。
 
入学以来、ずっと好きだった子に、高校卒業するときにダメ元で告白したらOKを貰えた。
実は向こうも、僕のことがずっと好きでなかなか告白できなかったらしい。
 
こんなことなら、もっと早く告白していればよかった。
 
でも、そんなこと言ってても始まらない。
過去は変えられないのだ。
 
だから、高校で楽しめなかった分、大学生活は彼女と一緒に楽しむつもりだ。
 
僕は自分のことで手一杯だったけど、彼女はなんと僕の志望していた大学をこっそりと調べ、僕と同じ大学に合格していた。
だから、4月からは彼女と一緒に大学ライフが送れるというわけだ。
 
正直に言うと、もし、事前に彼女が同じ大学に行くって知っていたら、僕はきっと彼女に告白しなかっただろう。
まだ4年チャンスがあるってね。
 
ホント、知らなくてよかった。
結果オーライだ。
 
僕はあまり自覚がないんだけど、周りから見ると僕らはラブラブすぎて痛いなんてからかわれる。
 
メールが来てから3分以内に返すって普通だと思うんだけど、周りはどうやら違うらしい。
僕もそうしているし、彼女もちゃんと3分以内に返してくれる。
 
だから、僕はいつ彼女からメールが来てもすぐに返せるように、トイレにもお風呂にもスマホを持ち込んでいるのだ。
それが苦っていうなら、問題かもしれないけど、僕としては彼女とやり取りできる嬉しさの方が勝ってるから、全然、嫌だとは思えない。
 
ただ、彼女の負担にもなりたくないから、午前2時から午前7時までは送らないようにしている。
あとは、バイト中と講義中とかね。
 
今日も朝、起きてさっそくメールを送る。
 
『おはよう』
 
すると数秒後に返事が来る。
 
『おはよう。今起きたの?』
『うん。今日は二限目からだから』
『そっか。私もそっち、受講すればよかったな』
『今、大学に向ってるの?』
『うん。ちょっと遅刻しそうで急いでるんだ』
『珍しいね。寝坊?』
『うん。開かずの間で引っかかったら遅刻するかも』
『ああ、あの凄い長い踏切ね。あそこヤバいよね』
『10分は開かないんだもん』
『あそこ、踏切締まるのも遅いよね』
『そうそう。あれ、絶対、事故とか起きちゃうよね』
『そういえばさ、今日もお昼、一緒に食べれる』
『うん。いいよ。今日は3限目までしか講義ないし』
『ホント? じゃあさ、今日のお昼はラーメンにしない? 久しぶりにこってりとしたの食べたくなっちゃってさ』
 
ここで彼女の返信がピタリと止まった。
10分以上待っても、返事が来ない。
 
既読になってるのに。
おかしいなぁ。
 
もしかして、ラーメン、嫌だったのかな?
 
終わり。

解説

いつも3分以内に返事を返すのに、突然、返事が来ないと言うのはたとえ怒ったとしてもおかしい。
そして、やり取りの中で、「危ない踏切」があることが出てきている。
その踏切につかまると遅刻すると言っていることから、「これからその踏切を通過する」ことになる。
さらに彼女はやり取りをしながら歩いている。
危ない踏切にさしかかり、やり取りに夢中で電車と接触した可能性が高い。
既読になっているのも、スマホを開いたままの状態で事故に遭ったと考えると説明がつく。

 

給食当番

今、クラスに嫌いな奴がいる。
なんか、やたらと先生に目をかけて貰ってるくせに、好き嫌いの多い奴だ。
 
先生はいつも給食を残すのはダメだと言ってるのに、そいつだけは残しても怒らない。
それだけでもムカつくのに、そいつは給食で嫌いなものがあると、家から弁当を持ってくる。
しかも、結構、美味そうなの。
 
見てるだけでスゲームカつく。
なんで、あいつだけ特別なんだよ。
 
だからこの前、そいつを倒すために牛乳の早飲みを無理やりやらせた。
もちろん、俺が圧勝。
あいつは牛乳を吹き出して泣き始めた。
で、保健室に連れて行かれてた。
 
ざまあみろって思ったね。
 
でも、あいつさ、それから帰って来ねーの。
サボりかよ。
 
しかもさ、あいつが吹き出したのを俺が掃除させられたんだぞ。
ホント、ふざけてるよな。
 
で、次の日さ、先生に呼び出されてめちゃくちゃ怒られた。
なんでだよ。
吹き出したのはあいつが悪いだろ。
しかも、ちゃんと公平に勝負したんだ。
正々堂々と。
 
なのに、あいつは負けたからって親に言いつけたんだ。
だから俺が怒られた。
 
マジ、あいつとは絶交だ。
その日も必死になって俺に謝ってきたけど、無視してやった。
もうあいつの顔なんて見たくもない。
 
それでさ、俺、今日は給食当番だったわけ。
だからあいつの給食に虫を入れてやろうと思って休み時間に用意したんだ。
 
で、給食の時間になったんだよね。
俺はシチュー係がやりたいって言って、あいつが取りに来た時にこっそりと虫を入れてやった。
 
あいつは全然気づいてない。
ざまあみろ。
 
全員の給食をよそい終わったときに、俺は失敗したことに気づいた。
自分の分のことを考えてなかったんだよね。
もう、容器の中は空っぽ。
 
仕方ない諦めるか、と思って俺の席に戻ったら誰かが用意してくれてた。
マジで感謝だね。
あとで誰がしてくれたか聞かないと。
 
じゃあ、いただきます。
 
あ、あいつ、また今日も弁当か。
けど、今日は給食の方が美味しそうだもんね。
 
ざまあみろ。
 
終わり。

解説

語り部が言っている「あいつ」は牛乳アレルギーだと考えられる。
だから、牛乳が入っている給食が出るときはお弁当を持ってきているのと、語り部が牛乳の早飲みをさせたときにものすごく怒られているわけである。
また、最後、語り部の給食を置いていたのは誰なのか?
それは「あいつ」だと思われる。
なぜなら「シチュー」は牛乳が入っているため食べれないはずで、現に「あいつ」は弁当を用意している。
それなのに、「あいつ」はシチューを「取りに」来ている。
つまり、それは語り部の機嫌を取るために用意したのだろう。
この後、語り部は自分で取ってきた虫入りのシチューを食べることになる。

 

ウォシュレット

俺は3年前くらいから、イボ痔に悩まされている。
本当は切った方がいいのかもしれないが、怖くて先延ばしをしているうちに、年月が経ってしまった。
 
しかも、最近はストレスのせいか、悪化してきている気がする。
仕事中でも1時間、ずっと座ってられないくらいだ。
 
そこで俺は思い切って、ウォシュレットを買うことにした。
少しでも清潔を保とうと思ったからだ。
そして、念願のウォシュレットの設置が終わる。
 
家の中にウォシュレットがあることになんか感動してしまう。
無駄に写メなんかも撮ったりした。
友達を呼んで自慢しようかと思ったけど、それは止めた。
いい大人がウォシュレットではしゃいでるのも恥ずかしいし、何より呼ぶ友達がそもそもいない。
 
数日、ウォシュレットを使ってみると、実に心地いい。
これは手放せないと思った。
 
でも、使い過ぎと水圧には気を付けること、とネットで書いてあった。
だから、どんなときでも20秒以上は使わないようにしている。
 
そんなある日の会社帰り、新しく建っていたラーメン屋を見つけた。
激辛のラーメン。
しばらく、この手のものは避けていたことと、お腹が減っていたこともあり、フラッと立ち寄ってしまった。
 
そのラーメンはすごく美味しかったのだが、次の日に腹を壊してしまった。
すぐにトイレに駆け込む。
辛い物を食べたせいで、痔が物凄く痛い。
 
慌ててウォシュレットのボタンを押す。
 
しかし、その瞬間、俺はさらに叫ぶことになってしまった。
 
俺はすぐに水圧を強から弱へと下げた。
 
辛い物はこりごりだ。
しばらく、食べるのは止めよう。
 
終わり。

解説

語り部は痔で、ウォシュレットの水圧にも気を配っていた。
それなのに、なぜ、水圧が『強』になっていたのだろうか。
さらに語り部には家に呼ぶ友達もいないと言っている。
一体、誰が水圧を『強』にしたのだろうか。

 

指名手配

最近、バイト先で仲良くなった友達と、バイトの無い日も遊んでいる。
凄く気が合って、一緒にいることが自然に感じるほどだ。
それで色々と遊びに行ったりしているせいで、バイト代だけでは足りなくなってきた。
 
だから、お金がかからないように街をぶらぶらとしながらしゃべるっていうのが定番になりつつある。
最初はバイトを増やそうかと思ったけど、それで自分の時間が無くなるのもなんか違う気がした。
 
「なんか、割のいいバイトないかな」
 
なんて冗談で言ったら、その友達が笑いながらある場所を指差した。
それは指名手配の犯人の写真が貼られている掲示板だった。
 
「賞金稼ぎでもしてみれば?」
 
犯人の下に金額が書かれているものがある。
いわゆる報奨金ってやつだ。
300万とか600万だとか、金額が大きいのも載っている。
 
「いや。見つからないから高額なんでしょ」
「まあ、そうだな。簡単に見つかるならもう逮捕されてるよな」
 
友達とゲラゲラと笑う。
そのとき、ふとある部分に目が行く。
それは写真じゃなくて似顔絵だった。
その絵は、なんていうか、素人が描いたような微妙なものだ。
 
「俺、思うんだけどさ。なんで、こういう似顔絵って、もう少しリアルなものにしないんだろうな? 警察も画力が高い人とかに頼めばいいのにさ」
「ああ、こういう絵柄なのには理由があるみたいだぞ」
「どんな?」
「あまり上手く描き過ぎると、その顔にイメージが引っ張られちゃうんだよ。ちょっと違ったら、別人かって思っちゃうらしい」
「そうなの?」
「だから、逃げるかも? と思うほうがいいんだよ。その方が見逃さないから」
「あー、なるほどな」
「だから、この似顔絵も特徴だけを引き立てて描いてあるな」
「確かに、なんか鼻がちょっと特徴的だもんな」
「いやー、でもこれ、特徴も間違ってるよ。的外れ。これじゃ捕まえられないな」
 
俺はその友達の言葉に固まってしまう。
思わず、ゴクリと唾を飲み込んでしまった。
 
「あはははははは。なんで、俺が犯人の顔を知ってるんだ? って思った? もしかして、俺が犯人じゃないかーって?」
 
俺は何も言えず、ジッと友達を見る。
だけど、友達は手を顔の前でブンブンと振った。
 
「残念でした。親戚が刑事やっててさ、それで写真見せてもらったんだよ」
「……あー、なるほど」
「お前、ビビり過ぎ―」
 
友達がゲラゲラと笑い、俺もつられて笑ってしまう。
 
いや、ホント、そういう冗談はシャレにならないって。
 
終わり。

解説

警察が犯人の写真を持っているのなら、似顔絵ではなく写真を出しているはずである。
つまり、友達は嘘を付いていることになる。
この友達は犯人であるか、犯人と顔見知りなのかもしれない。

 

金縛り

俺はよく金縛りになる。
別に霊感が強いとか、そう言うことじゃないと思う。
一回も、幽霊を見たこともないし、幽霊を感じたこともない。
 
だから、金縛りになっても怖いわけじゃない。
心霊現象じゃなく、単に脳の目が覚め、体が寝ている状態ってやつだろう。
 
最近、仕事で疲れているせいか、しょっちゅう金縛りになる。
だけど、俺には金縛りを解く方法があるのだ。
これをすると十中八九、金縛りが解ける。
 
それは首をコキッと鳴らすこと。
鳴らすとスーッと体が起きるのを感じるのだ。
 
そして、今日も金縛りになった。
これで4日連続だ。
解く方法を知っているからいいけど、面倒くさい。
 
少しイライラして、思い切り首を鳴らしてみた。
凄くいい音がして気持ちがいい。
 
これで金縛りが解けるはず……。
 
だけど、今回は全然解けない。
おかしいな。
ドンドン体が重くなる。
 
おかしいな。
こんなこと今までなかったのに。
 
もしかして今回のは心霊現象の方の金縛りか?
 
でも、なんか眠くなってきた。
もういいや。
このまま眠ってしまおう。
 
終わり。

解説

語り部は金縛りを解くために首を鳴らしているが、これは非常に危険な行為である。
首を鳴らすと脊椎の血管が傷つき、血栓ができる可能性がある。
語り部は寝ながら首を鳴らすことで、脳卒中になってしまったのかもしれない。

 

事故物件

人が死んだ部屋を、世間では事故物件とか言うらしいな。
俺が住んでるアパートが、まさにその事故物件らしい。
 
事故物件になると人が入らなくなるみたいで、住んでる人もドンドンと減っていった。
それでついに、このアパートには俺だけになっちまったんだよ。
 
だからこのアパートの持ち主がこのアパートを取り壊して新しいマンションを建てたいんだってよ。
 
けどさ、取り壊すっていうことは俺がどっかにいかなきゃならないってことだろ?
冗談じゃないよ。
俺はずーっとここに住んでたんだぞ?
 
それこそさ、アパートの持ち主が生まれる前からここに住んでるんだ。
それをいきなり出てけってどう思う?
 
だから俺はずっと抗議し続けたよ。
絶対に、出て行かないってね。
 
それから結構頻繁に人が来てさ、出てけって言うのよ。
いろんな奴がいたなぁ。
だけど、そんな奴らに俺が折れるわけないさ。
 
帰れって一括したら、みんなすごすごと帰って行ったよ。
 
もうこれで大丈夫だろって思ってたらさ、今度は実力行使に出やがった。
いきなり重機で乗り込んできて、アパートを壊そうとしてきたんだよ。
俺がいるのにだぞ?
 
さすがにこれには本当にぶち切れたよね。
現場責任者っていうのか?
なんか偉そうな奴のところに行って、怒鳴りつけてやったよ。
 
そしたら慌てて帰っていきやがった。
情けないよなぁ。
そんなんなら、最初から来るなっての。
 
そっからは何もなくなったよ。
誰も来なくなったし、取り崩そうとしたりもしなくなった。
 
これであと30年くらいは静かに暮らせそうだ。
本当によかったよ。
 
終わり。

解説

いくらなんでも、人が住んでいる状態でアパートを取り壊そうとするのはおかしい。
さらに、語り部はアパートの持ち主よりも長く住んでいると言っている。
それなのにあと30年もくらせるというのはあまりにも長すぎる気がする。
つまり、語り部が部屋で死んだことにより『事故物件になり』、語り部が幽霊として住み続けているので、誰もアパートに住むことがなくなった。
色々な人間が出て行けと言ったのは霊能力者だろう。
工事現場の責任者のところに怒鳴り込んだので、もう誰もここには近づかなくなったと考えられる。
少なくとも、語り部は30年は成仏する気がないようである。

 

下着泥棒

最近、隣に住んでいる子がなにやら悩んでいるらしい。
恥ずかしい悩みで、友達にも相談できないんだとか。
 
それはなんと、下着を盗まれるとのことだ。
家族で住んでいて、3つ年上のお姉さんもいるのに、ピンポイントで自分のだけ盗まれていることが、さらに悩みの種になっているんだとか。
 
二階のベランダに干しているようだけど、正直に言ってそんなのは意味ないと思う。
現に何度も盗まれているのだから。
 
本当は色々と助言をしたいところだけど、お隣さんとはまったく交流がないからな。
言ったところで逆に不審がられてしまう。
 
今回は買ったばかりのパンツを盗られたらしい。
たぶん、白と青の縞のやつだろう。
気に入ってたのに、と凹んでいる。
 
家族は警察に届けたみたいだけど、精々、見回りを強化するくらいで、あまりアテにはならないと思う。
 
しかたない。
今度、俺が今回の下着泥棒を撃退しておこう。
 
終わり。

解説

語り部は隣とはまったく交流がないと言っているのに、事情に詳しすぎる。
そして、下着泥棒は誰が、どの下着かを把握している。
買ったばかりのパンツの柄を知っているのもおかしい。
さらに、下着泥棒のことで悩んでいるというのをどこで聞いたのであろうか。
隣の子は友達にも相談していない。
おそらく、語り部は隣の家を盗聴している。

また、今回の、と言っているところから下着泥棒は複数いて、その中の一人は語り部の可能性が高い。

 

病院通い

ばあさんに先立たれてしまってから、早1年。
 
元々出かけるタイプではなかった私は、この1年間で本当に数えるほどの回数しか家を出なかった。
 
そんな私を心配してか、地区長さんが時々、訪ねてきてくれるようになった。
だが、わざわざ気を利かせて来てくれることに後ろめたさを感じて、来なくても良いと言ってあげた。
 
そしたら、地区長さんが、1人でいると何かあったときに心配だから、病院に通ったらどうかと言ってきた。
私は元気そのもので、50年以上、病院に行ったことはない。
医者からも100歳以上生きられると太鼓判を押されたくらいだ。
そんな私がどうして病院なんかに、と思った。
 
物は試しとして、私は病院に行ってみた。
 
そこで地区長さんがなぜ、行った方がいいと言った理由がわかった。
この病院には私のような老人しか通っていない。
 
逆に言うと病院に行けば同じような年の人間がたくさんいるということだ。
 
待合室でテレビを見ながら談笑する日々。
人と話すことがこんなに楽しいことだなんて、初めて知った。
そして、先生も私の悩みを聞いてくれる。
まあ、ほとんど愚痴のようなものばかりだが。
 
病院に通う人たちとほぼ顔見知りになり、楽しい日々を送っている。
周りからは病院に通い始めた頃より、元気になった、なんて冗談を言われるくらいだ。
だが、時々、顔を見せなくなる人がちらほらと出てくる。
 
私よりも年配の人も多い。
来なくなったことに心配していたら、亡くなった、なんて聞くことも少なくない。
 
毎日病院に行き、友達とおしゃべりをし、診察を受けて薬をもらって帰る。
いつも同じことの繰り返しの毎日だけど、私はそれが楽しい。
いつまでもこんな平凡が続いてほしいと願っている。
 
だが、最近、少し体調を崩すことが多くなってきた。
病院に行けない日も多くなってきている。
きっとみんなは心配しているだろう。
 
そうだ。
今度、病院に行ったら先生にまた薬を増やしてもらおう。
早く元気になって、みんなを安心させてやらなくては。
 
終わり。

解説

50年以上も医者いらずで、元気だった語り部。
それが病院に行くようになってから、体調を崩すようになった。
そして、語り部はこう言っている。
「毎日、薬を貰ってきている」「また薬を増やしてもらおう」
つまり、語り部は病院からもらって飲んでいる薬に寄って体調を崩している可能性が高い。
今後、さらに増やすことで語り部の体調は悪化していくのは火を見るより明らかである。

 

電磁石

世の中の全ては物理や科学などの法則で説明できる。
心霊現象とか超常現象、超能力などで説明できないものもあるが、それはまだ、解明されていないだけだ。
 
特に心霊現象なんて言うのは精神的なもの、つまりは思い込みによるものが大きいだろう。
 
そのことで、俺はある友人と口論になった。
その友人は霊感があるとかなんとか言って、幽霊の存在を信じている。
自分で勝手に信じているだけなら問題はないが、それを俺にも押し付けてくるから腹が立ったのだ。
 
だから、ここはひとつ、その友人を科学の力で驚かせてみようと思う。
 
誰も近づく人がいない、それっぽい廃墟。
そこにバッテリーを持ち込み、磁石と電磁石を使ってものを動かす。
 

電源のオンオフで磁気が発生するから、突然、物が動くから勝手に動いたように見える。
いわゆるポルターガイスト現象の完成というわけだ。
 
そして、深夜に友人をその廃墟に連れて行く。
すると友人は震えながら、ここはヤバいって言い出した。
 
いいね。
これでさらに思い込みだと証明しやすい。
驚かせるだけ驚かせて、種明かしをしてやるんだ。
 
中に入ると、しきりに友人が出ようと言う。
 
よし、ここだ。
俺はリモコンで電源をオンにする。
 
だが、なにも起きない。
 
ちくしょう。磁力が弱かったか?
 
そこで俺は電磁石に流す電気をメモリいっぱいに上げる。
 
計画通りに、物が動き始める。
すると同時に、腕が勢いよく引っ張られて、俺は思わず転んでしまった。
 
しくじった。磁力を強くし過ぎたか。
 
すぐに電源をオフにすると、動いていた物が止まる。
 
友人を見ると、かなりビビったようで顔が青ざめていた。
そして、悲鳴を上げて逃げて行った。
 
いや、ビビり過ぎだろ。
 
終わり。

解説

流す電気の量を上げ、電磁石の磁力を強くしても、語り部の右腕が引っ張られるのはおかしい。
語り部が自分の腕に磁石を付ける意味がないからである。
では、なぜ、語り部は思い切り腕を引っ張られ転んでしまったのだろうか。
霊感が強いと言う友人が逃げたということは、そこには強力な霊がいるのかもしれない。

 

ヘアカット

女の子なら、もう少し髪型に気を使った方がいいよ。
 
私が周りからよく言われる言葉だ。
私からしたら余計なお世話なのに。
 
お洒落なんかに興味ないし、髪も長いと何かと不便だから短い方が良い。
頭を洗うのも楽だし、すぐに乾くし。
 
以前、美容師さんに坊主にして欲しいと言ったら驚かれて、やんわりと断られてしまった。
 
そもそも、髪を切りに行くのも面倒くさい。
だから一気に短くして数ヶ月切らなくていいようにしたいのに。
 
私からしたら、みんな切ったかどうかもわからないくらいを毎月切るっていうのが理解できない。
 
いつも行っている美容院で、担当の美容師さんがしきりに髪が綺麗だ、もっと気を使えばいいのにと言ってくる。
美容院を変えるのも面倒くさいから我慢してたけど、あまりにもうるさいから変えることにした。
 
お客さんが多いところだと、何かと話しかけられるから、人があまりいないような変ぺな場所の美容院を選んだ。
 
そこは美容師さんが一人でやっているそうだ。
 
どんな髪型にするかを聞かれたので、とりあえずバッサリ切って欲しいと伝えた。
そしたら、何も言わず、ガンガン切ってくれて、逆に私はビックリした。
最初からここに通えばよかったなあと思ったくらいだ。
 
その美容師さんは自分から話すようなことはしないで、私の話を聞くことに徹してくれる。
こんな美容師さんは初めてだったので、私は何かと話していた。
 
そんな中で、ポロリと私はこんなことを言ってしまった。
 
「髪を切りに来るのが面倒くさいんですよね。もう髪を切らなくていいようになりたいです」
 
すると美容師さんはさらりと言った。
 
「できますよ」
「え? できるんですか?」
「はい」
「じゃあ、お願いします」
 
そう伝えると、美容師さんはバツンと大胆に切った。
 
終わり。

解説

もう髪を切らなくていいようになるには、髪が伸びなくなればいい。
美容師は語り部の希望通り、二度と髪が伸びなくなるようにした。
つまり、美容師は語り部の首を大胆に切ったのである。

 

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