本編
僕は夢オチの作品が大嫌いだ。
小さい頃、ワクワクして読んだ漫画の最後がまさに夢オチで、当時の僕は物凄いガッカリした。
全部が夢だったなんて、考えてみたら虚しい。
全部なかったことになるのなんてズルいと思う。
だから僕は自分で小説を書くときは絶対に夢オチにはしない。
どんなに展開が行き詰まってどうしようもなくなっても、夢オチは避ける。
夢オチにするくらいなら、未完成になってしまってもいいくらいだ。
まあ、そのせいで作品を全然完成させられてはいないんだけど。
でも僕はそれが正しいことだと思っている。
周りの人に聞いても、夢オチはやっぱりがっかりすると言ってるからだ。
だから、安易に夢オチを使う人を見ると物凄く腹が立つ。
どんなに仲が良い人でも批判する。
ネットで見つければ、作者とレスバすることも珍しくない。
時々、炎上することもあるけど、僕は一歩も引かない。
それくらい僕は信念を持っているのだ。
だけど、あるとき、世界的に有名な漫画家が夢オチを使った。
僕も読んでいた作品だったから、かなり落胆した。
その作者もSNSをやっていたので、僕はその作者の苦言を呈したんだ。
そしたら、大炎上した。
今までにないくらい盛大に。
でも、僕は一歩も引かない。
夢オチを使う方が悪いんだから。
絶対に、ここは譲らない。
そんなとき、出版社から電話がきた。
なんと僕が送った応募作が最優秀賞を取ったという連絡だ。
やっぱり僕は間違ってなかった。
これで、僕も作家の仲間入り。
そして、これからも絶対に夢オチは使わないと固く決意した。
終わり。
■解説
全く作品を完成させられていないのに、受賞できるのはおかしい。
つまり、応募作が受賞したというのは夢である可能性が高い。
作家になったというのは語り部の夢オチである。