痴漢

意味が分かると怖い話

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本編

僕は昔からよく女に間違われる。
それが嫌で、髪を短くしたり、服装も結構気を付けたりしていた。
筋肉も付けようとしたけど、どうやら筋肉が付かないタイプらしくて、体の線は細いままだ。
 
学生の頃はよく学園祭とかで女装させられたし、それを見て勘違いした男から告白されたりもした。
本当にそれが嫌で、男らしいことをいろいろやってみたけど、あまり効果はなかった。
 
ちゃんと男として見られたい。
ただ、それだけなのに難しい。
 
学生の頃は制服を着ていたから、あんまり間違われることはなかった。
時々、なんで女が男の制服を着てるんだって目で見られることもあったけど。
とにかく、今よりは間違われることはなかった。
 
会社勤めでスーツを着るようになってからは、取引先でも間違われることも多々ある。
今では女の人でもスカートタイプではなく、パンツスーツが多い。
そのせいで、スーツを着てるから男、という風には見られなくなった。
 
本当に最悪なのは、電車に乗っていると痴漢に遭うことだ。
満員電車でイライラするのに、痴漢されるなんて本当に終わってる。
しかも、おそらく、毎回同じやつだ。
かといって、相手を捕まえるというのも躊躇してしまう。
男なのに痴漢されたなんて恥ずかしいし、相手も男に痴漢なんかするかと開き直られてしまう。
 
まったく、ちゃんと男として見てもらうだけで、なんでこんなに苦労しなくちゃならないんだ。
 
なんとかならないかと思っていた時だった。
なんと、男性専用車両というのが試験的に実施された。
なんでも、痴漢冤罪が多くなっていて、勘違いされたくない人はそっちに乗るというものだ。
 
よかった。
ここに乗っていれば痴漢されることはないだろう。
これでちゃんと男として見てもらえる。
 
そう思っていたのだが――。
 
結局、痴漢された。
また、あいつだ。
一体、なんなんだよ、もう!
俺は男として見てもらいたいだけなのに!
 
終わり。

■解説

語り部が男性専用車両に乗っているということは、痴漢の相手は語り部が男だと知っているということである。
つまり、語り部は痴漢にはちゃんと男として見られている。

 

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