事故物件

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本編

人が死んだ部屋を、世間では事故物件とか言うらしいな。
俺が住んでるアパートが、まさにその事故物件らしい。
 
事故物件になると人が入らなくなるみたいで、住んでる人もドンドンと減っていった。
それでついに、このアパートには俺だけになっちまったんだよ。
 
だからこのアパートの持ち主がこのアパートを取り壊して新しいマンションを建てたいんだってよ。
 
けどさ、取り壊すっていうことは俺がどっかにいかなきゃならないってことだろ?
冗談じゃないよ。
俺はずーっとここに住んでたんだぞ?
 
それこそさ、アパートの持ち主が生まれる前からここに住んでるんだ。
それをいきなり出てけってどう思う?
 
だから俺はずっと抗議し続けたよ。
絶対に、出て行かないってね。
 
それから結構頻繁に人が来てさ、出てけって言うのよ。
いろんな奴がいたなぁ。
だけど、そんな奴らに俺が折れるわけないさ。
 
帰れって一括したら、みんなすごすごと帰って行ったよ。
 
もうこれで大丈夫だろって思ってたらさ、今度は実力行使に出やがった。
いきなり重機で乗り込んできて、アパートを壊そうとしてきたんだよ。
俺がいるのにだぞ?
 
さすがにこれには本当にぶち切れたよね。
現場責任者っていうのか?
なんか偉そうな奴のところに行って、怒鳴りつけてやったよ。
 
そしたら慌てて帰っていきやがった。
情けないよなぁ。
そんなんなら、最初から来るなっての。
 
そっからは何もなくなったよ。
誰も来なくなったし、取り崩そうとしたりもしなくなった。
 
これであと30年くらいは静かに暮らせそうだ。
本当によかったよ。
 
終わり。

■解説

いくらなんでも、人が住んでいる状態でアパートを取り壊そうとするのはおかしい。
さらに、語り部はアパートの持ち主よりも長く住んでいると言っている。
それなのにあと30年もくらせるというのはあまりにも長すぎる気がする。
つまり、語り部が部屋で死んだことにより『事故物件になり』、語り部が幽霊として住み続けているので、誰もアパートに住むことがなくなった。
色々な人間が出て行けと言ったのは霊能力者だろう。
工事現場の責任者のところに怒鳴り込んだので、もう誰もここには近づかなくなったと考えられる。
少なくとも、語り部は30年は成仏する気がないようである。

 

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