本編
今、クラスに嫌いな奴がいる。
なんか、やたらと先生に目をかけて貰ってるくせに、好き嫌いの多い奴だ。
先生はいつも給食を残すのはダメだと言ってるのに、そいつだけは残しても怒らない。
それだけでもムカつくのに、そいつは給食で嫌いなものがあると、家から弁当を持ってくる。
しかも、結構、美味そうなの。
見てるだけでスゲームカつく。
なんで、あいつだけ特別なんだよ。
だからこの前、そいつを倒すために牛乳の早飲みを無理やりやらせた。
もちろん、俺が圧勝。
あいつは牛乳を吹き出して泣き始めた。
で、保健室に連れて行かれてた。
ざまあみろって思ったね。
でも、あいつさ、それから帰って来ねーの。
サボりかよ。
しかもさ、あいつが吹き出したのを俺が掃除させられたんだぞ。
ホント、ふざけてるよな。
で、次の日さ、先生に呼び出されてめちゃくちゃ怒られた。
なんでだよ。
吹き出したのはあいつが悪いだろ。
しかも、ちゃんと公平に勝負したんだ。
正々堂々と。
なのに、あいつは負けたからって親に言いつけたんだ。
だから俺が怒られた。
マジ、あいつとは絶交だ。
その日も必死になって俺に謝ってきたけど、無視してやった。
もうあいつの顔なんて見たくもない。
それでさ、俺、今日は給食当番だったわけ。
だからあいつの給食に虫を入れてやろうと思って休み時間に用意したんだ。
で、給食の時間になったんだよね。
俺はシチュー係がやりたいって言って、あいつが取りに来た時にこっそりと虫を入れてやった。
あいつは全然気づいてない。
ざまあみろ。
全員の給食をよそい終わったときに、俺は失敗したことに気づいた。
自分の分のことを考えてなかったんだよね。
もう、容器の中は空っぽ。
仕方ない諦めるか、と思って俺の席に戻ったら誰かが用意してくれてた。
マジで感謝だね。
あとで誰がしてくれたか聞かないと。
じゃあ、いただきます。
あ、あいつ、また今日も弁当か。
けど、今日は給食の方が美味しそうだもんね。
ざまあみろ。
終わり。
■解説
語り部が言っている「あいつ」は牛乳アレルギーだと考えられる。
だから、牛乳が入っている給食が出るときはお弁当を持ってきているのと、語り部が牛乳の早飲みをさせたときにものすごく怒られているわけである。
また、最後、語り部の給食を置いていたのは誰なのか?
それは「あいつ」だと思われる。
なぜなら「シチュー」は牛乳が入っているため食べれないはずで、現に「あいつ」は弁当を用意している。
それなのに、「あいつ」はシチューを「取りに」来ている。
つまり、それは語り部の機嫌を取るために用意したのだろう。
この後、語り部は自分で取ってきた虫入りのシチューを食べることになる。