健康診断

意味が分かると怖い話

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本編

会社勤めをしていれば、年に1回、健康診断がある。
 
仕事が忙しかったりすると、ついつい生活リズムが狂い、食生活も乱れてしまう。
30代の前半までは特に気にすることもなかったが、35を過ぎると診断結果で引っかかってくる項目も増えてくる。
 
結果を見た後の数週間は改善するために頑張るが、気づくと元の生活に戻っていたりするものだ。
 
そして今年も健康診断の時期がやってきた。
1ヶ月前くらいから食べ物に気を付けたりしているが、それも焼け石に水だろう。
 
はあ……。今回は一体、どれだけの項目が引っかかるんだろうか。
 
なんて考えていたら、いきなり同僚が衝撃的なこと言ってきた。
 
「お前のおしっこくれ」
 
最初、俺は同僚が何を言ってるのかわからなかった。
だが、話を聞いて納得する。
 
その同僚は結婚していて子供もいるのだが、去年の結果で糖尿病一歩手前と言われたのだという。
それを見た奥さんがぶち切れして、強制的にご飯を野菜中心にされたらしい。
 
肉好きな同僚はそれが耐えられなくて、よく会社帰りに隠れて肉を食っていたのだという。
 
「もし、今回、尿検査で引っかかったら、今度は何を規制されるかわかったもんじゃない!」
 
なので、俺の尿を代わりに出して、検査を通過させたいのだという。
俺は独身だが、好きな物が食べれないというのが辛いのはわかる。
 
心の中で物凄い抵抗はあったが、俺は焼き肉を奢って貰うという条件で尿を渡した。
 
そして、健康診断の結果が出た。
 
同僚は無事に通過できたそうだ。
 
よかったよかった。
 
終わり。

■解説

健康診断は体の異変を見つけるためにやるものである。
同僚は正しく検査をしなかったことになり、糖尿病の予兆を見逃すことになる。
また、周りは改善されたと勘違いするので、同僚の食生活は元に戻ることになる。
そうなれば、同僚は近いうちに糖尿病になり、もっと苦しむことになるだろう。

 

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