本編
今日は美奈子ちゃんの家で、パスタをご馳走になるために呼ばれた。
美奈子ちゃんはクラスでも1番の人気の女の子で、男子のみんなが狙っている。
もちろん、僕も今日をきっかけに仲良くなれたらなって、思っているのだ。
美奈子ちゃんからは粉チーズを持ってきてほしいと言われていたから、お母さんが隠し持っている高い粉チーズを戸棚から出して持ってきた。
美奈子ちゃん、喜んでくれるかな。
美奈子ちゃんの家に着くと、他にも4人の男子がいた。
なんだ。呼ばれたのは僕だけじゃなかったのか。
がっかりしたこともあるけど、僕だけが呼ばれるなんてことは、正直おかしいと思っていたから、納得したという気持ちのほうが強い。
そして、他のみんなもパスタとか、トマトとかコンソメとか持ってきてほしいと言われていたみたいだ。
つまり、呼ばれた男の子は材料を用意するためだったのかもしれない。
僕は美奈子ちゃんに粉チーズを渡すと、笑顔でありがとうと言ってくれた。
でも、そのあと、美奈子ちゃんは急に暗い顔になった。
なんでも、康夫くんと隆くんが肉とトマトを忘れたみたいだ。
どうしようと悩んでいる美奈子ちゃんに僕は「ある材料の中で作ってみたら? それでもみんな喜ぶよ」と言った。
そしたら、美奈子ちゃんは納得したように頷いて、ないなら用意すればいいんだねと言ってキッチンに入っていった。
僕たち男子は美奈子ちゃんの部屋で待つことになった。
美奈子ちゃんが料理を作っている間、みんな、部屋の中を探索したいような感じだったけど、誰かがそれを美奈子ちゃんにしゃべったら確実に嫌われてしまう。
だから、みんな、動くに動けなかった。
待つこと1時間。
そろそろ、みんな緊張で疲れていたときだった。
部屋のドアが開いて、美奈子ちゃんが入ってきた。
美奈子ちゃんが用意してくれたのはミートソースパスタ。
変わった味がしたけど、とってもコクがあって、本当においしかった。
それにしても、ずっと康夫くんの姿が見えない。
先に帰っちゃったんだろうか?
終わり。
■解説
肉とトマトがないのに、ミートソースパスタができるのはおかしい。
ということは美奈子が自分で用意したということになる。
つまり、康夫の肉と、血をトマトの代わりにしたのかもしれない。