■本編
男は展示場の警備員をしている。
怖がりな男は夜の見回りがとても苦手で、いつも神経を擦り減らせていた。
しかも、今、展示されているのは世界のミイラである。
いつも以上に不気味な雰囲気に、ビクビクしながらも深夜の見回りを行う。
もう少しで終わろうとしたときだった。
男は思わず、ヒッと小さく悲鳴を上げてしまった。
なぜなら、ミイラと目が合ってしまったからだ。
「そんなわけがない」
そう思いながら、もう一度、恐る恐るミイラの方を見た。
だが、やはり気のせいでミイラは上を見たままだった。
男は安堵し、休憩室へと向かったのだった。
終わり。
■解説
ミイラは目がないはずである。
なのに、語り部と目が合い、その後は上を向いている。
つまり、このミイラには目があることになる。
もしかすると、このミイラはこの世のものではないものが宿っているのかもしれない。