■本編
最近、近所の廃墟に女性の地縛霊が出るという噂がある。
その地縛霊は怨念が強く、通りかかる人をあの世に連れて行くらしい。
いつも仕事帰りにこの場所を通るので勘弁してほしい。
その噂を聞いた2、3日はその場所を避けて帰るようにしていたが、遠回りになるので結局、いつも通り、この場所を通っている。
そんなある日。
残業で深夜に帰ることになった。
本当はこの場所を通りたくなかったが、早く帰りたかったので、仕方なくその場所を通るルートで帰った。
だが、そんなときに限って、悪い予感は当たるものである。
廃墟の前を通りかかったとき、女性がこちらに向かってくるのが見えた。
ここは廃墟以外なにもない。
普通の人間が通りかかるわけがない。
ヤバい。
気づくと俺は冷や汗をかいていた。
だが、落ち着いて見て見ると、その女性には足があった。
よかった。
幽霊じゃない。
俺はホッと胸を撫で下ろした。
終わり。
■解説
この女性が幽霊ではないのなら、なぜ、こんなところにいるのだろうか。
そして、ここに出る幽霊は通りがかった人をあの世に連れて行くという噂がある。
もし、その女性が幽霊ではなく、普通に生きた人間だったらどうだろうか?
つまり、そこにはただの殺人鬼がいるだけである。
この後、語り部が無事に帰れた可能性は低い。