タクシー

意味が分かると怖い話

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■本編

最近、山の中で複数人分の死体が見つかったらしい。
警察は連続殺人の線で捜査をしているみたいだ。
 
被害者には共通点は見つからず、通り魔的な犯行だと発表されている。
状況を見ると、被害者たちは犯人の車に乗り、山の中まで来て、そこで殺害されているらしい。
 
きっと、ネットとかで知り合って、不用意に犯人の車に乗り込んだんだろう。
今の世の中、何があってもおかしくないのに、不用意だね、ホント。
 
ただ、私も残業で家に帰るのが遅くなることが多い。
犯行現場は結構近いということもあるので、警戒は怠らないようにしている。
 
だから、駅から家までは歩いて帰らずにタクシーを使うようにしているのだ。
 
だけど、終電で駅に降りても、最近はタクシーが止まっていない。
だから、タクシーの配車アプリで呼ぶことにしている。
 
いつものタクシー会社のタクシーを依頼すると、20分かかると出た。
正直、20分は長い。
だけど、歩いて帰るのはやっぱり怖い。
 
仕方なく待つことにした。
すると、5分くらいでタクシーが到着した。
 
早いね。
20分待つつもりだったから、これは嬉しかった。
 
タクシーに乗り込み、家の場所を伝える。
 
すると、タクシーは逆方向に向かい出した。
 
「あそこの大通りが工事してましてね。こっちを行く方が早く着くんですよ」
 
おお。
この運転手の人は仕事が出来る人だ。
きっと、早く来たのも最短ルートを使ったんだろう。
 
「喉乾きませんか? 良かったらどうぞ」
 
信号待ちしているときに、運転手さんがポットからコーヒーを注いで渡してくれた。
 
「最近は、個人タクシーはこういうサービスをしないとやっていけないんですよ」
 
そう言って運転手さんが苦笑いする。
 
なるほど。
確かにこういうサービスがあると、次回も使おうかなと思うかもしれない。
 
ありがたくコーヒーを受け取り、飲む。
 
仕事で疲れているのと車の揺れのせいで、少し眠くなってきた。
着いたら起こしてくれるだろう。
 
私は瞼を閉じた。
 
終わり。

■解説

語り部は『いつものタクシー会社』に配車を頼んだのに、乗っているタクシーは『個人タクシー』である。
また、20分かかると出ているのに、5分で来たところも怪しい。
つまり、このタクシーは連続殺人犯の犯人が獲物を探して乗せているというわけである。
コーヒーにも睡眠薬が入っていた可能性が高い。
おそらく、語り部は眠った後、山へと連れて行かれ、そこで被害者になってしまうはずである。

 

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