本編
男はあるテレビ局を恨んでいた。
お店の経営者だった男は、ある日、テレビ局が取材させてほしいと言われ、宣伝になると大喜びしていた。
だが、そのテレビ局は男のお店が杜撰な経営をしているという方向で番組を制作したのだ。
それは全くの嘘ででっち上げだったのだが、テレビの影響力は凄まじく、いくら誤解だと説明したところで、男の店の信用は回復することはなかった。
男のお店は倒産し、一家離散となってしまう。
それからというもの、男はこのテレビ局を恨み、色々と調べる。
すると、このテレビ局は他にも色々と虚偽の内容を放送していることがわかった。
何もかもが信用できない、嘘だらけのテレビ局。
それをどんなメディアに訴えたところで、どこも取り上げてはくれない。
そこで男は自分の命を張ってテレビ局を潰そうと画策した。
生放送。
その番組内に乱入し、自殺を図るというものである。
死ぬ前に声明文を画面に映し、そして自殺する。
そうすれば、さすがに世間はこのテレビ局の内情に目を向けるだろう。
そして、男はそれを決行する。
生放送と言われている番組内に乱入し、テレビ画面に声明文を映した後、銃で自殺を図った。
男は死ぬ間際、カメラが回っていることを確認し、満足そうに笑みを浮かべて死んだ。
翌日。
テレビ局は何事もなく、生放送番組が放送された。
終わり。
■解説
男が恨んでいたテレビ局は何もかもが嘘にまみれていた。
つまり、男が自殺して見せた番組も、生放送ではなかったということになる。
その証拠に、男が死んだ後に、生放送番組は『放送』されている。
男の自殺した部分はカットされ、普通に放送された。