本編
地元に閉園した古い遊園地がある。
バブル時代のときに創って、バブルが終わったときに採算が取れなくなって潰れたらしい。
俺が生まれた時には既に潰れた後だったから、どんなところだったのかはよくわからない。
ただ、俺が学生だったときは遊園地というよりも、心霊スポットとして有名だった。
その遊園地の中にお化け屋敷があったらしいんだけど、どうやらそこが『出る』みたい。
なんでも、そのお化け屋敷では本物の死体を使ってるだのなんだのって噂だったらしい。
当時はその噂もあったせいで、結構客が来ていたって話。
そんな場所だから心霊スポットとして肝試しに行く奴らが多かった。
俺の同級生も何人かは行ってたっぽい。
まあ、そのほとんどは収穫なしだったみたいだけど。
でも、その中の何人かは本当に幽霊を見たとか、幽霊に追いかけられたとかあったらしい。
あくまで噂だけどね。
いわゆる都市伝説みたいなものかな。
大学を卒業して、就職してから3年くらい経った頃だったと思う。
お盆休みが取れて実家に帰ったとき、友達も帰省していたみたいだから会うことになった。
高校時代、スゲー仲がよかった2人。
飯食いながら高校時代の思い出話をしてたときだ。
急にSが心霊スポットの話をし始めた。
懐かしさと、結局学生時代に行かなかったということもあり、3人で行ってみようという話になった。
まあ、よくある話だよね。
酒も飲んでなかったから、車で行こうと言うことになって、俺が車を出した。
そんなに遠くない場所だったから、すぐに着いた。
俺たちの予想では、この時期なら結構人がいると思っていた。
だけど、まったく人気がなかった。
少し怖かったけど、せっかく来たんだからと、俺たちは遊園地の中に入った。
お化け屋敷を見つけて入ってみる。
確かにスゲー怖かった。
本物が出るって話だし、元々お化け屋敷って人を驚かせるために作ってるから、本当に怖かった。
俺たち全員、ずっと悲鳴を上げてたと思う。
とりあえず一回りして、車へと戻る。
するとTが「誰かいなくなってたりしてな」なんてことを言い出す。
怪談話じゃよくあることだ。
だけど、3人しかいないのに1人いなくなったらさすがに気づくだろうと突っ込みを入れた。
馬鹿々々しいが点呼を取り、ちゃんと3人が揃っていることを確認する。
じゃあ、帰るかと車を出して数分後、警察に止められた。
何をしてたのか聞かれて、肝試しとは言えないので、ちょっとドライブと言って濁した。
Sは警察官に「やっぱり、この時期は肝試しに来る人が多いんですか?」と質問する。
すると警察官はきょとんとした顔した後、すぐに「ああ、あの遊園地のこと?」と思い出したようだ。
警察官の人の話では数年前からピタリと来る人がいなくなったらしい。
俺たちはなんでだろ、と不思議に思ったが、とりあえず警察官に頭を下げて出発しようとしたら、止められた。
同乗者がシートベルトをしてなかった、ということで罰金や減点はなかったが、注意された。
警察官がパトカーに乗って行った後、俺は2人に「なにやってんだよ!」と文句を言った。
すると、2人はポカンとした顔をして、ちゃんとシートベルトをしてると主張する。
確かに2人ともシートベルトをしていた。
Tが「職質的な感じで止めたんじゃねーの」と言ったので、妙に納得した。
もし、酒を飲んでたらと思うとゾッとする。
そして、その日は何事もなく家に帰った。
次の日、Sから電話があって、3人でお祓いに行こうと言う話になった。
なんでも、あの遊園地は本当にヤバいらしい。
だから、最近では全く人が来なくなったのだろう。
3人とも特になにかあったわけじゃないが、念のためということでお祓いに行った。
お祓いが終わって帰るときに、寺の住職から紙の封筒を貰った。
中にはお札が入っていた。
それぞれ、1つずつお札を渡す。
Sはポケットに、Tと俺は財布の中に入れる。
そして、その帰り道、お祓いって意外と高いんだなと愚痴をこぼした。
2人を家に送り届けると、また来年も集まろうということになった。
俺も家に戻り、車から降りようとしたとき、運転席にお札があった。
俺は落としたのかなと思い、車のバックミラーのところにお守りを括りつけた。
終わり。
■解説
語り部はお札を「財布」に入れているので、落とすはずはない。
なのでお札は4枚あったと考えられる。
では、なぜ4枚あったのか。
それは住職が4人と見間違えたため。
そして、前日に警察に止められた際も、3人ともシートベルトをしていたはずなのに、注意されている。
つまり、お化け屋敷に行った後、「1人」憑いて来ていることになる。