ワゴンセール

意味が分かると怖い話

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■本編

掘り出し物が好きなTは、お店を回るのが日課だった。
 
いつもは個人店や骨董品、中古屋などを回るのだが、その日は何となくデパートに行ってみた。
 
デパートは新しい物しか売っていないので、見て回ってもTにとって望むようなものは置いていない。
せっかく来たのだから、一通りは回ってみようと歩いていた時だった。
 
以前は化粧品のお店だったところが閉店して、中古のゲーム店になっている。
Tはすぐに飛び込んだ。
開店してからそんなに日が経っていないようで、店内は割と混んでいた。
 
人の間を縫うようにしながら、店内を見て回るT。
 
すると、いままでずっと探していたレトロゲームを見つけた。
買おうと思い、すぐに手に取り、レジへと向かう。
 
だが、手持ちが足りないことに気づくT。
 
近くのコンビニに駆け込んでお金を降ろして戻って来るにしても、10分以上はかかってしまう。
 
もし、その間に売れてしまったらと考えると、ゲームソフトを元の棚に戻す気にはならない。
隠すようにして戻しても、見つけられない可能性は0ではない。
 
するとTは店の隣が服のお店で、ワゴンが出されているのが目に入った。
そこで、ソフトを持ち出し、ワゴンの中に積んである服のポケットに入れる。
 
これで絶対に見つかることはない。
 
安心して、Tはコンビニにお金を降ろしに走った。
 
戻ってきて、ワゴンの方へ向かうと、Tは中年の女性たちに突き飛ばされた。
振り返ると、大勢の女性がゲーム屋の隣の服のお店の方へ走っていく。
 
Tは文句を言いつつもゲーム屋の方へ歩いていく。
 
そんなとき、近くから「ワゴンセールの開始です」という声が聞こえた。
 
終わり。

■解説

Tはワゴンの中の服のポケットにソフトを入れている。
そして、ワゴンセールが行われた。
多くの女性がTを突き飛ばすほどということは、ワゴンの中の服は人気があるということだ。
ソフトの入った服が買われてしまう可能性はかなり高い。

 

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