ホラーゲーム

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本編

俺は今、ゲーム会社でシステムエンジニアをやっている。
 
務めている会社は個人サークルかってくらい少人数の零細企業だ。
まあ、会社のメンバーが馬鹿ばっかりなので仕方ない。
 
大体、今の時代、ゲームを作るといえばソシャゲだろう。
なのに、この馬鹿会社はコンシューマーゲームを作っている。
宣伝が重要なのに、零細企業が大手に勝てるわけがない。
ホント、終わってる。
 
当たり前だけど予算もギリギリでいつも、こっちは超ハードなスケジュールでやっている。
2、3日連続の徹夜なんて当たり前だ。
ホント、頭おかしいだろ。
 
で、今作ってるのはホラーゲームなんだけど、これも内容が酷い。
この話を書いてるのも会社のやつなんだけど、ホント終わってるだろ、これ。
これのどこがホラーなんだよ。
コメディの間違いなんじゃねーのか?
こんなの、俺が書いた方がマシだろ。ホントに。
 
けど、俺はエンジニアだから、そこは口出ししないことにしてる。
俺は俺の仕事を完璧にやればいいだけだ。
ついでに言えば、この会社の社長もシステムエンジニアだ。
 
まあ、言わなくても想像つくと思うけど、社長ももちろんヤバい。
ホントにエンジニアなのか?って問いただしたいくらいレベルが低い。
こんなの専門学生の方が全然、マシだろ。
俺はいつも、この社長が書いたシステムを修正して尻拭いしてる。
 
それなのにいつも「早くしろ早くしろ」とオウムのように同じことしか言わない。
ホント、マジでクソな会社だ。
 
今日ももちろん、徹夜で作業だ。
眠気も限界を超えると目が冴えてくるのが不思議なんだが、いったい、どうなってるんだろうか。
 
いつも通り、コードを書いていると俺はふと、いいことを思いついた。
いわゆる仕込みというやつだ。
ある条件を行うと、用意したメッセージが表示されるというもの。
 
そのメッセージにはこの会社の馬鹿な奴らの悪口と、最後にこのゲームを買ったやつが呪われるという意味のことを書いた。
しかも、この条件はかなり厳しいので、普通にプレイしてるだけでは、まあ、表示されない。
100万回に1回くらいってところだろうか。
 
だからテストプレイをしたところで見つからないだろう。
まあ、システムを解析できるやつがいれば別だけど。
どちらにしても、この会社の中にはそんなことができるやつがいないから、まず見つからないだろう。
 
コードを仕込み終わって、満足してた俺に社長が話しかけてきた。
 
「おい、真面目に仕事しろよ。ホラーゲームなんだから、ふざけて作ってたら呪われるぞ」
「あ、すみません……」
 
ホント、頭の中までお花畑だなこいつ。
呪われるって……。
んなのあるわけねーだろ。
 
社長はこういうところがある。
このゲームを作る際にホラーゲームってことで、社員全員でお祓いに行っている。
そんな金があるなら、給料上げろよって話だ。
 
とはいえ、ローンチも近い。
ここからはスピードを上げてやっていこう。
 
そして、その日から2週間後。
ゲームはほぼ完成し、社内で最終的なデバックを行うフェーズになった。
もちろん、エンジニアの俺も最終チェックをやる必要がある。
 
そこで俺はあの仕込みがちゃんと出るかも検証してみた。
特定の条件を満たして、メッセージを表示させる。
 
俺は思わず、悲鳴を上げてしまった。
 
なぜなら、画面いっぱいに「やめろやめろやめろやめろやめろやめろ」と赤い字で表示されたのだ。
俺は慌てて仕込んでいたメッセージを削除した。
 
今考えてもあれは怖かった。
呪いって、ホントにあるんだと思い知った。
 
これからホラーゲームを作るときはふざけるのはやめよう。
 
終わり。

■解説

語り部が、仕込んだものはコードを解析できるエンジニアがいれば見つけられると言っている。
つまり、これは呪いではなく、エンジニアによる単なるメッセージの書き換えである。
そして、この会社のエンジニアは語り部以外では社長だけとなる。
そう考えると社長に「社員の悪口」を見られていることになる。
この後、語り部が社員たちからどんな仕打ちをされるのかは、火を見るより明らかであろう。

 

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