未来の日記

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本編

俺は去年、うつ病になって会社を退職した。
いわゆるブラック会社ってやつだったのだ。
 
まずはしっかり体調を整えるということで、今はまだ就職活動はしていない。
働いてたときは休日もなにもない生活だった。
プライベートなんて全くと言っていいほどなかったのだ。 
なので、あと2年くらいは、こうやってゆっくり過ごしても罰は当たらないだろう。
 
とはいえ、やりたかったゲームをしたり、読みたかった漫画を読んだり、見たかったアニメを消化してしまうと、途端にやることがなくなってしまい、暇になってしまった。
 
それで、久しぶりに部屋の中を大掃除してみる。
最初は面倒で、やっぱり止めようと思ったが、掃除するたびに懐かしいものが掘り出されてきて、テンションが上がっていく。
 
小学生の時に無くしてたと思ってたキン消しやビックリマンシール。
借りたまま返してなかったファミコンやスーファミのソフト。
 
そして、高校の時に初めて買ったエロ本。
 
手に取るとあの時の思い出が一気に蘇る。
なかなか買う決心が付かなくて、本屋で3時間以上ウロウロしたこと。
懐かしくて思わず、顔が綻んでしまう。
 
そんな思い出に浸りながら押入れを掃除していると、1冊のノートが出てきた。
なんの変哲もない、普通のノートだ。
 
題名は『未来の日記』と書かれている。
全く記憶はないが、どう見ても俺の字だ。
 
そういえば、昔、こんな番組が流行ったなと思いつつ、ノートを開いてみる。
 
そこには未来のことが書いてある。
未来と言っても、その当時の俺から見た未来であって、今の俺からしてみれば過去のことが書いてあった。
 
『平成19年。〇×〇大学に入学』
 
これは大学に入学した年数も大学名も合っている。
おそらく、この未来の日記は高校の時に書いたものだろう。
だから、そのときに目指していた大学を書いたんだと思う。
年は順調にいけば、書いてある年に入学できる。
つまり、浪人しなければ当たるというわけだ。
 
『平成23年。正社員で会社に勤める』
 
まあ、これも就職浪人しなければ当たる。
しかも、会社名を書いていないのが、我ながらこざかしい。
 
『平成26年。魔法使いになる』
 
魔法使い?
なんのことだ?
と思ったら、どうやら30でもまだ童貞だと言いたいらしい。
 
うるせーよ。
合ってるよ!
まだ魔法使いだよ!
 
『平成32年。転職する』
 
残念。これは年が外れている。
俺が転職したのは令和2年だ。
 
『平成34年。ニートになる』
 
黙れ!
ニートじゃねーよ!
今は充電期間なだけだから!
 
とにかく年も内容も外れだ、外れ!
 
『平成35年。FF16がやれなくて心残り』
 
これが最後だった。
 
きっと、この辺で書くのが飽きたんだろう。
にしても、FF16って、凄いピンポイントだな。
 
なんてことを考えていると今日がFF16の発売日だということに気づく。
 
「暇だし、やってみるか」
 
俺は掃除を途中でほっぽり出して、ゲーム屋に駆け込んだ。
そのとき、頭に未来の日記のことが思い浮かび、もしかしたら「売り切れ」で悔しい思いをするのかと思ったが、そんなことはなく普通に買えた。
 
今日は徹夜でプレイしようかな。
 
俺は少しテンションが上がり、足早に家へと向かった。
 
終わり。

■解説

平成32年は令和でいうと2年なので、未来の日記の内容は合っている。
また、同様に仕事を辞める時期も当てていることになる。
さらにFF16の発売の年まで完全に当てているのである。
つまり、この未来の日記に書かれている内容は実際に起こると推測される。
 
そして最後に「FF16がやれなくて心残り」と書いてあったが、語り部は無事にFF16を購入できている。
ということは、語り部は購入したのにFF16を起動(プレイ)することができないということが予想される。
 
さらに未来の日記がこの行で終わっていることも不気味である。
 
もしかすると、語り部は帰り道に事故に遭い、亡くなってしまうのかもしれない。

 

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