本編
久しぶりに休みが取れたから、息子をレジャー施設に連れて行った。
息子と遊びに行くのは本当に久しぶりだったから、色々と連れまわしてしまった。
気付くと随分と遅い時間になった。
真夜中に車で家へと帰る。
そして、帰るには峠を通らないとならない。
さらに峠には幽霊が出るって噂だ。
幸い、息子は助手席で疲れて寝ている。
寝てる間にさっと、通過してしまおう。
そう思っていたのに、頂上付近で息子が目を覚ました。
寝てていいぞ、と言ったが大丈夫と言って外を見ている息子。
すると、いきなり息子が悲鳴を上げた。
理由を聞いてみると、曲がり角で毎回同じ人が立っているというのだ。
その話を聞いて、血の気が引く。
幽霊だ。
もう外を見るなと息子に言うが、気になってずっと外を見ている。
そして、曲がり角に差し掛かるたびに、泣きそうな悲鳴を上げる。
その声を聞いて、こっちも怖くなってくる。
早く通過したいが、峠でスピードを上げるわけにはいかない。
すると、息子が今までで一番大きな声を上げて、運転している私にしがみついてきた。
どうした、と聞くと、震えながら言った。
「……さっきの曲がり角に、もういなかった」
なんだ。
いないなら、よかったじゃないか。
■解説
息子が悲鳴をあげた理由は、「角に立っていたおじさんが消えた」からではない。
それはつまり、おじさんが車の中に移動したということだった。