本編
私は健康オタクだ。
食事にも気を付けているし、運動だって毎日ちゃんとやっている。
体にいいものだと聞けば、すぐに取り入れるし、体に悪いものだと聞けば、絶対に食べない。
それくらい徹底している。
なぜなら、長生きをするためだ。
絶対に孫の顔を見るまでは死ねない。
私に子供ができるのが遅かったというのと、最近は晩婚化が進んでることで、息子がいつ結婚するかわからない。
それでも、希望は捨てず、気長に待つつもりだ。
息子が40歳になり、もう結婚はしないのかと思っていたら、お付き合いしている人がいると家に連れてきた。
息子よりも10歳も若い子で、子供も欲しがっている。
半年後には結婚式を挙げることも考えているそうだ。
よかった。
これで孫の顔が見られそうだ。
そう思ったことで気が緩んだのか、体調を壊してしまった。
寝込む日が続き、家族旅行も家で一人留守番することにした。
こんなところで死んでたまるか。
もうすぐ孫の顔が見られるんだ。
そう思うと、体調もいくぶん良くなってくる。
そして、数年後。
体調はすっかり良くなり、元気になった。
だが、私の願いは叶わず、長生きしてしまったことを、いまだに後悔している。
■解説
語り部は体調が悪くて留守番しているときに、家族は旅行で事故に遭って死んでしまっている。
そのため、語り部は孫の顔も見れずに、一人生き残ってしまったことを後悔している。