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本編
誰にだって長所と短所があるし、何か1つは人よりも秀出ているものがある。
俺にとって、人よりも優れているのはゲームだ。
特にTPSゲームは誰にも負けない自信がある。
TPSゲームというのは自分視点のシューティングゲームだ。
よく話題に上がるのは、戦場で銃撃戦をするものがある。
新作のTPSゲームでも、俺は常にランキング1位だ。
しかも、全世界での1位。
正直言って、これは凄いことだ。
才能と言っても過言じゃない。
でも、俺の親はわかってくれない。
いつまでも仕事をしないでゲームをしている俺に対して不信感を募らせている。
毎日のように「仕事を探せ」だの「バイトでもいいから働け」だの言ってくる。
そんなことをしていたら、1位から転落してしまう。
アルバイトなんて、俺じゃなくてもできることだ。
でも、ランキング1位は俺にしかできない。
ゲームの世界では、俺は唯一無二の人間だ。
それを俺の親はわかっていない。
バイトで稼げる程度の金と世界ランキング1位とじゃ、重要度が全く違う。
それをどんなに説明してもわかってくれない。
金を稼がない人間は、この家にいらない、だそうだ。
家から追い出されてしまえばランキング1位から転落どころか、ゲームさえできなくなってしまう。
それでは本末転倒だ。
だから俺はしょうがなく、なにか簡単なバイトでもしてお茶を濁そうと考えていた。
だけど、そんな俺に転機が訪れた。
それはあるゲームのデバッカーをしてほしいという依頼が来たのだ。
もちろん、報酬も出る。
しかも、結構、高額だ。
ゲームをするだけで、お金が貰える。
これで親も文句が言えなくなるだろう。
俺はその依頼を受けることにした。
俺がプレイするゲームは新作のTPSゲームだ。
世界ランク1位である俺に、ぜひ、やってもらいたいとのことで、声をかけてきたらしい。
この新作のTPSゲームはヴァーチャル世界との融合を考えているのだという。
つまりはテレビ画面を見ながらゲームをするのではなく、その世界に入り込んでゲームをするという感じだ。
そのゲームは物凄くリアルで、まるで現実世界のようだった。
これには本当にびっくりした。
今の技術はこんなところまで来ていたのかと。
だが、普通のゲームと違って、コントローラを操作するのではなく、実際に、身体を動かすゲームになっている。
ちゃんと銃に重さがあるし、走れば疲れる。
なにより、敵も妙にリアルで、撃てば血が出るし、反応もリアルだ。
最初はちょっとグロいし、疲れるし、辛いと思っていたが、慣れれば問題ない。
数ヶ月もすると、イメージ通りに動けるようになっていた。
そして、俺は様々なステージをプレイする。
激しい戦闘の中を駆け抜け、敵を倒していく。
まさに気分爽快だ。
そんなあるとき、ゲームをプレイする場所を変えたいと言われた。
なんでも、それは外国で、そこに行ってゲームをプレイして欲しいのだそうだ。
もちろん、旅費は出る。
ゲームが終われば、バカンスを楽しめるらしい。
俺はその申し出を受けた。
そして、俺は飛行機に乗り、海外へと旅立った。
飛行機の中で俺はいつの間にか眠ってしまった。
起きたら、既にゲームプレイが始まっていた。
周りではドンパチの戦闘が始まっている。
そこで俺はあるプレイヤーからミッションを告げられる。
敵を倒しながら、特定のエリアまで侵入するというものだ。
楽勝。
たぶん、1時間もかからずにクリアできるだろう。
戦場を駆けながら、まずは3人ほど撃って倒す。
そこから、物陰に隠れ、また2人ほど撃つ。
順調だ。
思ったよりも楽かもしれない。
次はちょっと攻めてみよう。
銃を乱射しながら進む。
すると、腹にドンという衝撃が走った。
熱い。
血が噴き出し、激痛が襲ってくる。
すぐに動けなくなり、その場に倒れる。
すると敵がすぐに俺を取り囲み、銃を向けた。
くそ。
ゲームオーバーか。
次はもっと慎重に進もう。
終わり。
■解説
いくらリアルなバーチャルだとしても、痛みを感じるのはおかしい。
語り部は本当の戦場に送られ、ゲーム感覚で戦っていた。
語り部が参加したのはゲームのデバックではなく、死を恐れない兵士を育てる計画だったのかもしれない。
ゲームオーバーは死を意味するので、語り部に次はない。