意味が分かると怖い話 解説付き Part271~280

意味が分かると怖い話

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国家権力

俺の親父は国会議員をやっている。
議員としてはベテランで、地元の企業ともガッツリとつながってるらしくて、政治基盤は盤石だといつも言っていた。
 
しかも、警視長とも知り合いみたいで、何かあったらもみ消してもらっている。
 
もちろん、俺もよくその人のお世話になってる。
 
まあ、この町じゃ、俺はやりたい放題といってもいい。
どこでも顔パスだし、盗みやむかつくやつを殴っても捕まらない。
逆に、俺に関わった方が親父から結構な額をもらえるから嬉しいんじゃないかな。
 
この街じゃ俺が一番偉い。
みんな俺を避けて通るし、誰でも俺にヘコヘコする。
 
ホント、俺は勝ち組だよ。
親父の息子でホントよかった。
 
今日は暑いからアイスを食おうと思って店に寄ったら、変な奴が横入りするなと注意してきたから、ぶん殴ってやった。
アイスも食えてストレス発散もできた。
最高だね。
 
そしたらさ、次の日、俺は逮捕されて、それがニュースにもなったみたいだ。
俺は今、留置所にいる。
 
ったく。
親父は何やってんだよ。
早くここから出すように、言えっての!
 
あーあ、サイアク。
 
終わり。

解説

語り部の言うように小さい事件なら、もみ消すことができる。
しかし、今回、語り部は逮捕され、ニュースにもなっている。
つまり、警視長が握り潰せない上にニュースにもなる人物を殴ったことになる。
下手をすると国際問題になりかねないほどの人物に対して傷害事件を起こしたのかもしれない。
この後、語り部の父親は国会議員としての地位を追われ、語り部も無残な人生を歩むはめになる。

 

駅弁マニア

俺は電車マニアだ。
と、言うより駅弁マニアと言った方が近いだろうか。
 
電車から見える風景を見ながら駅弁を食べるのが好きなのだ。
休みがあれば、駅弁を食べるために電車に乗る。
そんな趣味を20年もやっていれば、マニアと呼べるほどの知識も得られるものだ。
 
全国の駅弁を調べて、食べて、ブログに書く。
これが俺の生活のサイクルになっている。
 
だから、自慢じゃないが、駅弁を見るだけでどの駅の物かもわかるし、駅名を言われれば売っている駅弁名を言える。
それくらい、俺は駅弁に詳しいのだ。
 
そんな俺がなにより楽しみにしているのが出張だ。
 
会社の金と時間を使って、駅弁を堪能できる。
なんと駅弁が美味いことか。
 
なので、出張が入れば、俺は改めて駅弁をネットで調べ、食べるものを決める。
当日に悩むというのも捨てがたいが、これは万が一乗り過ごしたりすると、さすがにまずいからだ。
 
そして、今回、1年に1度の待ちに待ったかなりの遠方の出張が入った。
俺は嬉しくて、前の日に遅くまでどこで、どの駅弁を食べるかをリサーチし、完璧な計画を立てた。
だけど、そのせいでほとんど寝れなかった。
 
電車に揺られていると、すっかり眠くなり、いつの間にか眠ってしまった。
 
昨日の徹夜と最近の仕事の忙しさのせいで、一度眠気が来てしまうと抗えない。
終始、寝たり起きたりの微睡が続く。
 
そんなとき、店員さんから声をかけられた。
目を開けると駅弁の車内販売だった。
周りには俺以外の乗客は1人もいない。
 
「どれしますか?」
 
店員さんにそう聞かれて、昨日立てた計画を思い出したが、ここがどこの駅かがわからない。
仕方ないので、俺は「おすすめの駅弁でお願いします」と言った。
 
店員さんはわかりましたと言って、一つお弁当を渡してくれた。
俺はお金を払い、飲み物も一緒に買う。
 
俺はかなりお腹が減っていた。
外を見ると真っ暗だ。
 
だいぶ、寝てしまったことを残念に思いながらも、とりあえず、駅弁を1つ買えたのはよかった。
 
さっそく、俺は駅弁の蓋を開ける。
見たことのないお弁当だったが、もの凄くおいしそうだ。
 
俺は一緒に買ったお茶を1口飲んでから、駅弁を食べ始めた。
 
終わり。

解説

語り部は相当の駅弁マニアである。
そして、前の日にはしっかりと最新の駅弁を調べていた。
なので、『見たことのないお弁当』というのはおかしい。
語り部は目的の駅を乗り過ごした、もしくはこの世のものではない駅の駅弁を買ってしまったのかもしれない。

 

整形好きな彼女

今の整形の技術はかなり凄いらしい。
 
俺の彼女も結構、ハマっているみたいで、少しずつ整形をしているみたいだ。
元々、彼女は美人だから、俺は別にそれ以上は整形しなくてもいいと思うんだけど、やっぱり女ってキレイを追い求める生き物らしい。
 
まあ、俺からすれば綺麗になるのは嬉しいことだから、別にいいんだけど。
 
この前、ふと、彼女の昔の写真を見たんだけど、ビックリした。
ほとんど別人だったんだもん。
 
いやー、ホント、すごいね整形って。
 
確かに、昔の彼女の顔だったら付き合ってなかったかもな。
そう考えたら整形さまさまだ。
 
やっぱりさ、彼氏としては彼女が綺麗になるって自慢になるんだよ。
みんなから羨ましがられてさ。
何かにつけて、彼女を連れましたりしてた。
 
あれはなんていうか、気持ちいいね。
勝ち組って感じで。
 
だけどさ。
整形って失敗することもあるんだよな。
 
結構、大幅に手を入れるってことで、かなりの金額をつぎ込んだみたいなんだけさ。
 
失敗しやがったの。
普通以下になっちまった。
 
もう、がっかりだよね。
 
だからさ、別れることにしたんだ。
あいつからのメールや電話は無視した。
 
この前、あいつの誕生日会があるって呼ばれたんだけど、バックレたよね。
 
もう、それで察しろって思うんだけど、それからも頻繁に連絡来てさ。
 
だから、別れるってメールして、着信拒否してやった。
そしたら、嘘のようにメールとか電話はこなくなったんだ。
 
まあ、当たり前か。
 
にしても、あいつくらい綺麗なやつってなかなかいないんだよな。
彼女を作ろうにも、あいつのせいで、俺の中の美的感覚が引き上げられちゃってさ。
 
少しくらいの美人じゃ、付き合う気にはならないんだよね。
 
で、どうしようかなーって思ってたらさ。
 
いたの。
 
あいつ、そっくりの女が。
もちろん、手術が失敗する前のな。
 
びっくりしたよ。
そんなそっくりな人間なんていないだろって思ってんだけどさ。
 
聞いてみたら双子なんだってさ。
 
なるほどね。
似てるわけだ。
 
で、俺はその子と付き合うことになった。
 
俺はその子に忠告しおいたんだ。
整形とかはするなよって。
 
だって、あいつみたいに失敗したら困るだろ?
 
その子はしないって約束してくれたから安心だ。
 
そういえば、来週、その子の誕生日だからプレゼントを買わないと。
少し、奮発するか。
その日は、その子と初のお泊りデートだからな。
 
終わり。

解説

語り部の元の彼女は整形していた。
昔の写真とは結構違うと語り部は言っている。
たとえ、双子であったとしても、『手術前の彼女』と同じ顔なのはおかしい。
そして、『この前』、元の彼女の誕生日だったのに、『来週』に誕生日なのもおかしい。
その子は元彼とは全く関係ない人物である可能性が高い。
では、なぜ、その子は双子などという嘘をついてまで語り部に近づいたのか?
何か、深い企みがあるのかもしれない。

 

眼鏡の彼女

俺の彼女は眼鏡をかけている。
いわゆる眼鏡美人ってやつだ。
 
けど、伊達眼鏡というわけではない。
本当に目が悪いんだそうだ。
 
一時期はコンタクトをしてたみたいだけど、どうも慣れなくて止めたらしい。
俺としては彼女の眼鏡が好きなので、それでいいと思う。
 
しかも、裸眼だと本当に目が悪くて、眼鏡をかけてないと歩いているだけで、色々とぶつけてしまうというくらいだ。
前に眼鏡を落としてヒビが入ったときに、1日、眼鏡なしで過ごしてた時はこっちが心配になるほど、苦労していた。
 
あと、彼女は少し嫉妬深いところがある。
電車に乗ったときに、近くの女の人の香水の匂いがついてたり、長い髪がついていたりしたら、すごく問い詰められてしまう。
刺されそうな勢いだ。
誤解を解くのに結構、苦労する。
 
だから、電車に乗るときや他の女の人と会う、サークルの日や飲み会の日は必ず事前に彼女に連絡するのが習慣になった。
 
そんなある日、サークルの飲み会で、後輩の女の子が悪酔いして泥酔してしまった。
仕方なく、俺は後輩をタクシーに乗せて、家に帰すことにする。
 
タクシーを止めて、後輩を乗り込ませようとしたときだった。
いきなり、後輩がキスしてきた。
酔ってたからだろう。
すぐに引き剥がして、タクシーに乗せ、後輩の家の住所を運転手さんに伝える。
 
ドアが閉まりタクシーが走り去っていく。
 
こんな場面を彼女に見られでもしたら刺されてしまう。
危なかったと思った瞬間。
道路の向かい側に彼女が立っていた。
 
俺はかなり焦った。
 
だが、幸運なことに彼女は眼鏡をかけていない。
この距離なら絶対に見えないはずだ。
 
現に彼女は何事もなかったように歩き出した。
 
ふう。
今回は彼女の目の悪さに救われたな。
 
今度から気を付けないと。
 
終わり。

解説

彼女は歩くのも苦労するのに、眼鏡をかけずに外出するのは考えられない。
では、どういうことか?
つまり、彼女は眼鏡ではなくコンタクトをしていたと考えられる。
そして、ここまでタイミングよく、その場を通りかかるのだろうか。
おそらく、彼女は嫉妬深いこともあり、語り部が飲み会に行っているのを遠くから見ていたと考えられる。
この後、語り部は彼女に刺されるのかもしれない。

 

アプリ

最近はAIの発達で、AIのアプリが人気だ。
世間の注目がAIに集まっていく中、あるアプリがリリースされた。
 
相手の心を読み取るという特殊なアプリだ。
なんか、脳波を読み取ることで、相手が何を考えているのかが、アプリを通して文字で表示されるというものらしい。
 
これは爆発的に広まった。
AIのアプリは下火になり、このアプリが流行りに取って代わってしまう。
 
だが、その1年後。
そのアプリを使う人間が誰1人いなくなった。
 
終わり。

解説

心を読めることで、人間は疑心暗鬼になってしまった。
アプリを使う人間がいなくなったとあるが、人間自体が滅んでしまったのでアプリを使う人がいなくなってしまったのである。

 

性善説

その住職は性善説を信じていた。
動物は生まれ落ちたときの本性は善であり、人間の欲によって悪に染まっていくという考えだ。
 
あるとき、住職はその考えを証明するため、生まれたばかりの赤子を引き取る。
物心つく頃から、住職はその子を厳しく育て上げ、人間の欲というものを排除した。
 
そして、その赤子が成長し、成人を迎える頃。
 
その子は住職とその周りの人間たちを襲い、刃物で刺していく。
周りの人間が死んでいき、自分の意識が薄れていく。
 
「やっぱり私の性善説は正しかった」
 
そう思いながら、住職は息絶えた。
 
終わり。

解説

なぜ、人を殺したのに、性善説が正しかったと思ったのか。
それは、住職が人間を殺すことを悪だと考えていなかったからである。
様々な生き物に害を成す人間そのものが悪だと考えていたのかもしれない。
なので、その悪を殺した子は善だと確信したのである。

 

リレー

少年は足が遅かった。
それがずっとコンプレックスで、体育や運動会などは憂鬱で仕方がなかった。
 
しかし、そんなある年の運動会。
出場する種目決めで、なんと少年はリレーのアンカーにされてしまった。
 
嫌だと抵抗するが、周りの人や教師から頑張ってみろと励まされ、渋々受けることになる。
 
周りは走ることにコンプレックスを持っている少年に、諦めるのではなく頑張ってほしいという思いを持っていたからであった。
 
少年は周りの期待に応えようと、必死に練習を重ねる。
 
そして、運動会当日。
 
少年のクラスは好調で、学年優勝が目前となった。
その状況に、周りの人は手のひらを返し、少年にプレッシャーをかける。
 
最後のリレーで5位以内に入れば優勝が決まる。
絶対に5位以内に入れ、とクラス全員から言われ、緊張で足が震える少年。
 
ついにリレーがスタートなる。
少年のクラスはスタートも好調で、ぶっちぎりの1位を走っていく。
 
そして、少年へバトンが渡される。
少年は必死に走った。
今までにないくらいに。
 
その結果、少年は誰にも抜かれることなく、順位を維持してゴールした。
 
少年はクラス中から失望され、余計に走ることが嫌いになった。
 
終わり。

解説

少年のクラスは、スタートは1位だったが、少年に渡るときには順位を落としてしまっている。
つまり、少年は最後の順位の時にバトンが渡ったことになる。
後ろには誰もいない状態なので、誰にも抜かれることはない。
だが、逆に言うと誰も抜くことはできず、ドベのままゴールしたため、周りから失望されてしまったというわけである。
また、少年の前に走った選手が抜かれているのに、すべての責任を少年に押し付けているというところも、このクラスの闇が窺える。

 

暖房便座

北国に住んでいるとさ、トイレがすごく寒くて嫌になるだよね。
便座に座るとさ、飛び上がるくらい冷たいわけ。
 
もちろん、便座カバーはしてるよ。
でも、それでも冷たいことは変わりないんだ。
 
しかも、便秘気味だからさ、トイレにこもる時間は長いわけよ。
寒い中で、震えてたら出るものも出ないよ、そりゃさ。
 
だから、俺は思い切って暖房便座を買ったんだ。
ウォシュレットがついてるやつ。
 
いやー、ホント快適だね。
 
もっと早く買うべきだったよ。
これで冬のトイレも嫌な思いをしなくて済む。
 
でもさ、最近、ほら、電気代が高くなったでしょ?
で、ずーっと暖房便座の電気を入れてると勿体ないかなーって思い始めたんだよ。
俺は一人暮らしだし、昼は会社行ってるし。
だから、その間、ずーっと電気つけてたらもったいないって思うんだよね。
それで、俺は会社を出るときに暖房便座のコンセントを抜くことにしたんだ。
 
同僚に話したらさ、そんなの何円も変わらんって笑われたんだけどさ。
でも、こういうのは感覚の問題だよ。
少しでも節約したいんだよね。
 
でも、気を受けないといけないのが、会社から帰って、すぐにコンセントを入れないと、冷たくなった便座に座ることになる。
 
以前、コンセントを入れるのを忘れて座ったときは、思わず飛び上がっちゃったよ。
ある意味、懐かしい感覚だね。
だから、帰ってきたら、まず、コンセントを入れるっていう癖をつけたんだ。
 
そんなある日のことだったんだけどさ。
返ってる途中でお腹壊して、家まで急いで帰る羽目になったんだよね。
その日はやたらと寒くて、やたらとコーヒーを飲んだせいだと思う。
 
何とかギリギリの状態で家に帰れたときは、神様に感謝したね。
 
俺はすぐにコンセントを入れて、便座に座った。
いやー、暖かい。
さっきまで苦しんでたのがウソみたいに、幸せな気分だ。
 
ホント、暖房便座はいいよ。
絶対にお勧め。
北国に住んでるなら、尚更ね。
 
終わり。

解説

いくら暖房便座でも、コンセントを入れた瞬間に温かくなるわけがない。
しかも語り部は一人暮らしで、会社を出る前にコンセントを抜き、その日は寒かったと言っている。
では、なぜ、語り部が帰ってきてすぐに座ったのに温かかったのか。
もしかすると、語り部が使う前に、誰かが暖房便座を使っていたのかもしれない。

 

ある部族のおもてなし

ある森の奥に、ある部族の村があった。
そして、その部族はある部族としか、絶対に交流しない。
過去に何人もの人間が、その部族に接触し、帰らぬ人となってしまった。
 
そんな中、ある学者が少しずつ、辛抱強く接触し続けることでわずかにコミュニケーションをとれるようになる。
 
それは民俗学の歴史から見ても偉業と言えることだった。
 
学者はそれでも、はやる気持ちを抑えて、根気強くコミュニケーションをとり続ける。
 
そんなある日、学者はその部族から、おもてなしをするので、村に来てほしいと招待された。
 
学者は喜び、村へと向かった。
 
次の日。
その部族の村に、唯一交流のある部族の王が訪れ、おもてなしを受けた。
 
終わり。

解説

何人もの人間が部族に接触して帰らぬ人になったのは、すべて食べられてしまったからである。
そして、学者はおもてなしを受ける側ではなく、王をもてなすのための食材にされてしまった。

 

身分証明書

俺は交番のお巡りさんだ。
 
大人からはあまりよく思われないこともあるが、そんなことは関係ない。
俺は俺の正義を貫く。
町の人々からどんなふうに思われても、俺は町の人たちの味方でいるつもりだ。
 
だから、どんな小さなことでも、どんなに遅い時間でも、相談があれば全力で対処する。
 
そうしていると、最近、町の中の治安が悪いことに気づく。
通報するかどうか迷うような小さい悪事が結構、増えてきているのだ。
これはどんな小さな相談でも対処した結果だと、自負している。
そのことに気づいているのは、警察の中でも俺くらいだろう。
 
その原因というのが、他の町から入ってきた人間が問題を起こしている。
町の中を見ていると、見たことのない人間が確かに増えてきている印象だ。
 
元々は治安がよかった町が、外から来た人間がかき乱していく。
それが我慢ならない。
 
だから、俺は職質を強化することにした。
見たことのない人間を見つけては、職質をする。
 
そして、身分証明書を見せて欲しいというと、逃げ出す者が多数だ。
大体、こういうと、後ろめたいことがあるやつは挙動不審になる。
 
で、取り調べをすれば何かしら犯罪行為をしているがわかる。
 
まさに、身分証明書は踏み絵みたいなものだ。
 
今日も俺は怪しそうな男に職質する。
いつも通りに身分証明書を見せて欲しいと言ってみる。
 
するとその男はすんなりと保険証を出してきた。
 
見てみると男は26歳でこの辺りに住んでいることがわかる。
少し話を聞いてみると、その男は昔からずっとこの辺りに住んでいるのだという。
 
俺は安心して、身分証明書を返す。
動揺もしなかったし、なによりここの住人だということは信用できるということだ。
 
俺は協力ありがとうございましたと言って、その男を見送った。
 
そして、1週間後。
管轄内で一人の男の死体が見つかった。
身分を証明するものは持っていなかったが、俺はその男に見覚えがあった。
そこで聞き込みをしたところ、男はこの辺りに住んでいた26歳であることがわかる。
 
どうせ、よそ者の犯行だろう。
俺は絶対に、犯人を捕まえてみせると、被害者の男に誓った。
 
終わり。

解説

語り部は見たことがなくて怪しいと思った人間に職質をしている。
ということは、最後に職質した男は、見たことがないので職質したということである。
それなのに、職質された男は昔からこの街に住んでいると言っている。
そして、殺された男に関して、語り部は「見たことがある」と言っている。
昔からこの街に住み、職質した男と同じ26歳だ。
つまり、職質した男は、男を殺して身分証明書を奪った可能性がある。
語り部は身分証明書が偽物かもしれないという考えがなく、犯人を取り逃してしまったのかもしれない。

 

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