ある旅行にて

意味が分かると怖い話

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本編

私はお盆休みを利用して、友達と2人で海外旅行に行くことにした。
生まれて初めての海外旅行。
多少、不安があるけど、ワクワク感の方が強い。
前の日なんかも、楽しみでなかなか寝付けなかったくらいだ。
 
それは友達も同じだったみたいで、目の下にしっかりとクマが出来ていた。
待ち合わせの空港で会った時は、お互い、相手の顔を見て大爆笑してしまった。
 
飛行機の中では、友達と二人で旅行プランを確認しながら、はしゃいでいた。
 
今回の旅行は旅行会社のプランジャなく、友達が立てたプランだ。
というのも、友達が行きたがっていたのは心霊スポットだったから。
そんな場所をプラン内に入れている旅行会社はなかったので、友達が自分でプランを立てたというわけだ。
 
私も心霊系は嫌いじゃないけど、そこまでして行きたいかと言われると、実はそこまでじゃない。
ただ、この旅行は友達が計画してくれたものだし、ちゃんと旅行の後半では私の行きたい場所もプランに入れてくれているから、口は出さずに付き合うことにしたのである。
 
現地に到着したら、まずはレンタカーを借りる。
着いた日にホテルじゃなく、さっそく心霊スポットに向かうというわけだ。
 
本当はホテルに泊まりたかったところだけど。
 
ただ、車を運転する友達が「右側通行だー」とはしゃいでいた。
私は免許を持っていないので、そこまでインパクトはなかったんだけど。
 
日本とは違って、道はまっすぐ続いている。
平坦な道だ。
このペースなら、ちゃんと夕方くらいには心霊スポットになっているゴーストタウンに到着できるのだそうだ。
 
「ここのスポットはね、世界的にも有名で、いつでも肝試しに来てる人が多いんだって。それはそれで萎えるよねー。やっぱり、心霊スポットは二人だけで回りたいし」
 
口では不満そうに言っているが、表情はまんざらでもない。
きっと、楽しみでしょうがないんだろうね。
 
私としては他にも人がいてくれた方がいいんだけど。
だって、怖いでしょ。
 
真っすぐで平坦な道をずっと走っていると、前日の寝不足からか、ウトウトしてしまう。
ただ、友達が運転しているのに、私は寝るわけにはいかない。
そう思って、必死で睡魔に抗っていた。
 
でも、睡魔っていうのは抗えない。
私はいつの間にか、寝てしまった。
 
目を覚ましたのは、車の酷い揺れの衝撃だった。
 
びっくりして目を開けると、そこは町の中だった。
町というより、廃墟だらけの場所。
友達が言っていた、心霊スポットのゴーストタウンなんだろう。
着いたんだと思い、隣を見ても運転席に友達はいない。
 
きっと私が寝てしまったせいで、友達が私を起こさないように一人で行ってしまったのかもしれない。
友達はそういうところがある。
こんなところに一人で残される方がずっと怖い。
気を使うところがあるのだけど、返ってそれが逆効果になることが多いのだ。
 
友達が帰って来るのを待つしかないかと思っていたのだが、いつまで経っても帰って来ない。
そこで、私は車から出て、友達を探しに行くことにした。
 
友達の名前を叫びながら歩く。
すると、結構、人がいることに気付いた。
 
そう言えば、友達は人気のスポットで、いつでも肝試しをする人がいると言っていた。
きっと、そういう人たちなんだろう。
 
私はたどたどしい英語で、友達のことを聞こうと思って話しかけたが全て無視されてしまった。
明らかな無視。
肝試しを邪魔されたから、怒ったのかもしれない。
 
さらに進んでいると、救急車とパトカーを見つけた。
さすがに警察は無視しないだろうと思い、声をかけた。
 
だけど、無視されてしまった。
 
そんなことなんてあるのだろうか。
そう思っていると、私は衝撃的なことに気付いた。
 
ここにいる人や車は全部、透けているのだ。
 
そう。
つまりは幽霊ということだ。
 
さすが、世界的にも有名な心霊スポットだ。
こんなに幽霊が多いなんて。
 
私は恐ろしくなって、その場を逃げようとした。
 
だけど、そのとき私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
友達の声だ。
 
声がした方向を見ると、そこには血だらけのお友達が立っていた。
物凄い大声で泣き叫んでいる。
 
私が駆け寄ろうとしたときだった。
 
突然、横にタクシーが停まった。
 
「あんた、早く乗って!」
「え? でも……」
「いいから、早く!」
「それなら、友達も」
「ダメだ! あんただけしか無理だ。早く乗って!」
 
私はその運転手さんの剣幕に押されて乗ってしまった。
すると、タクシーは凄い勢いで走り出す。
 
「いやあ、危なかったよ。あんた、危うく連中に連れられて、さ迷うことになるところだったんだ」
 
タクシーは道にいる人たちをすり抜けて進んでいく。
やっぱり、みんな、幽霊だったんだ。
私の友達も……。
 
「安心しな。俺がちゃんと、あんたを送り届けてやるからさ」
 
私はホッと一安心した。
海外にも親切な人はいるものだ。
 
終わり。

■解説

語り部は車の衝撃で目を覚ましている。
しかし、車には何の損傷もないのはおかしい。
つまり、幽霊なのは語り部の方。
タクシーも幽霊で、語り部がこの世に迷って幽霊にならないように、送り届ける役目である可能性が高い。

 

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