本編
その男の子は身体が小さく、勉強もできないことからクラスでよくからかわれていた。
からかってくるのはクラス委員で、その男の子にとっては嫌いな存在だった。
その男の子は毎日、学校に行くのが嫌で仕方なかった。
そんなある日。
ある雑貨店で、『存在を消す消しゴム』というものを見つけた。
お店の人に聞くと、その消しゴムで写真をこすると、存在が消えるというものだった。
説明を受けたがよくわからなかった男の子は、それでもその消しゴムを買って帰った。
さっそく、あのクラス委員が写っている写真を出して、クラス委員の部分を消しゴムで擦った。
次の日。
男の子は期待して学校に行ったが、クラス委員は消えていなかった。
男の子はがっかりしたが、その日からクラス委員は男の子をからかわなくなった。
男の子はこの消しゴムは嫌なことを消す、消しゴムなんだと思った。
それからは先生に怒られれば先生を、注意してくるクラスメイトがいればそのクラスメイトを、そして、うるさい両親も消しゴムで擦った。
そして、気づけば、男の子は誰からも何も言われなくなった。
終わり。
■解説
その消しゴムは、擦った写真の人物から、『自分の存在を消す』ものだった。
つまり、男の子は周りの誰からも認識されない存在になってしまった。