タイムマシン

意味が分かると怖い話

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■本編

俺が中学生のときまでは、うちはなんてこともない普通の家庭だった。
今考えれば、あの普通の時間が幸せだったんだろう。
 
そして、俺が中学を卒業するとき、母親が男と駆け落ちしてしまった。
親父はそれがショックだったのか、その後すぐに体を壊し、病気で亡くなった。
 
それからの俺の人生は散々だった。
高校を中退し、その日暮らしのような生活。
 
なんともみじめな人生だ。
 
そんなとき、ある募集が目に入った。
 
「タイムマシンの被験者募集」
 
それはかなりの高額な報酬だった。
どうやら、人間で試すのは初らしく、下手をすれば帰って来れない、もしくは何か体調の変化があるかもしれない。
そういうわけで、かなりの高額らしい。
 
確かに、その報酬額は俺にとって魅力的だったが、それよりも俺の心を動かしたのが、『過去に戻れる』ことだった。
 
どのくらい戻るかは被験者の希望を叶えてくれるらしい。
 
俺はすぐにその募集に飛びついた。
天涯孤独だと話したら、すぐに採用された。
 
そして、実験当日。
俺が希望したのは30年前だ。
 
そう。
母親と、駆け落ちした男が出会ったと言っていた時間だ。
 
実験はあっけなく成功した。
同じ町なのに、全然見たことのない風景。
 
それもそのはずで、30年前と言えば、俺が生まれる前だ。
 
俺は母親の実家に張り込みした。
 
そして、ついにあの男が現れた。
俺は母親と、あの男が出会ったその日のうちに、あの男の殺害を決意した。
 
というより、最初からそうするつもりだった。
 
俺はこの時代にいる人間ではない。
だから、現行犯で捕まらなければ逃げられる。
 
俺は準備して、男の家へと向かう。
 
この男さえいなければ、俺の家族はずっと幸せにくらせていたはずだ。
 
俺はその憎しみを込めて、男を刺した。
何度も何度も刺した。
 
男が絶命した時だった。
 
フッと、俺の目の前が暗闇に包まれ、意識がなくなった。
 
終わり。

■解説

語り部が刺殺したのは、本当の自分の父親。
つまり、母親は不倫、もしくは妊娠後に別の男と結婚していた。
本当の父親を殺したことで、語り部はこの世に存在しなくなったというわけである。

 

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