缶コーヒー

意味が分かると怖い話

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■本編

男は何かと恨まれるタイプだった。
人を見下したり、思ったことをすぐに口に出したりすることで、トラブルも多い。
仕事もベンチャー企業の社長をしていることで、取引先や社員から恨まれることも多々ある。
 
以前、家に爆発物を送り付けられたこともあった。
 
そんなこともあり、男は他人を全く信用しなくなる。
自分で用意した食べ物や飲み物しか口にしない。
なので、商談の場で出された飲み物も、絶対に手を付けようとしなかった。
 
そんなあるとき。
自殺した社員の妻が、会社を訴えようとしていることを聞き、何とかもみ消そうと、家にいった。
 
相手の女は「主人から聞いてます」と言って、男に飲み物を出そうとはしなかった。
もちろん、男の方も、出されても口にするつもりはない。
 
本題の話し合いは平行線をたどり、既に2時間が経ってしまっていた。
女は一度、「失礼します」と言って、キッチンに行き、ペットボトルとコップを持ってきた。
 
出されても飲まないのを知っているはずだろ、と男は思ったが、そうではなかった。
 
女は自分と男の前にコップを置き、自分のコップだけにお茶を注いで飲み始めた。
 
「飲み物、持参してるんですよね?」
 
女に言われ、男はカバンから、来る前に自動販売機で買った缶コーヒーを出す。
そして、女がしたように、コップに注いで飲んだ。
 
数分後、男は血を吐き、倒れてしまった。

 

終わり。

■解説

もちろん、男が用意した缶コーヒーには毒物は入っていなかった。
では、どうして男は血を吐いて倒れたのか。
それは、コップの方に毒が入っていたからである。
男は女の動作に釣られて、コップを使ってしまったことが失敗だった。

 

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