■本編
男は仕事の人間関係で悩んでいた。
直属の上司が、疑心暗鬼が強く、一部の部下以外の人間を信じようとしなかった。
男は上司に取り入るために、上司をよいしょしたり、飲みに誘ったり、上司の好きなものを差し入れたりなど、色々と策を弄した。
だが、それが報われることはなかった。
どんなに完璧に仕事をこなしても疑われてしまう。
そのせいで、男は何度も昇進を逃している。
そんなこともあり、いつしか男はその上司を恨むようになっていった。
そんなある日。
会社で使っているメールに、あるメールが届いた。
中を開いて見ると、『呪いのアプリ』という、怪しいアプリを紹介するものだった。
嘘くさいと思いながらも、男は思わず、URLを開いてしまう。
そこには相手のイニシャル、相手の年齢、相手とのエピソード、相手をどう呪い殺したいか、などの入力項目があった。
男は自分の名前を書き込むわけではないことと、相手の名前もイニシャルしか書かなくていいということもあり、つい、入力してしまった。
書いているうちに、今までの愚痴が飛び出してしまい、夢中になって書き込む男。
そして、全てを書き終えて、送信する。
胡散臭いと思いつつも、男は上司が呪われないか期待しながら、上司を観察するようになる。
呪いがかかっていると考えると、上司と接することも苦ではなかった。
そして、次の日。
男は他部署に左遷された。
終わり。
■解説
会社のメールに届くということは、男のメールアドレスを知っている人間が送ったということになる。
ということは、会社の人間である可能性もある。
男が他部署に左遷されたことから、この呪いアプリは上司やその部下が作った可能性が高い。
男が上司に対して、色々と取り入ろうとしているのを、信じていいのか疑心暗鬼になり、このようなアプリに入力させて、様子を見たということかもしれない。