本編
僕の友達に色々な国のコインを集めるのが趣味という男の子がいる。
その子のお父さんが貿易の会社に勤めてるとかで、色々な国のコインが手に入るのだそうだ。
よくその子に、コインを自慢されるのだが、正直それが良い物か悪い物かがわからない。
欲しいとも思わないけど、とにかく「凄い!」と言っておくことにしてる。
前に一回、「変なコインだね」と言った時に、物凄く不機嫌になっちゃって、2日くらい口をきいてくれなかった。
だから、とにかくコインを見せられたら「凄いな」「いいな」というようにしているのだ。
そうすれば、その子は凄く機嫌がよくなるし。
そして、その子にはもう一つ趣味というか好きな遊びがある。
コイントスっていうやつだ。
コインを飛ばして、表か裏かを当てるゲーム。
何かあったら、その子は持っているコインでコイントスをする。
そして、その子は凄くコイントスが強い。
僕は一回もその子に勝てたことがないのだ。
前に何かズルをしてるんじゃないかって疑ったんだけど、「それならお前がやってみろよ」と言われて、僕がコインを飛ばす方をやってみたんだけど、それでもやっぱり勝てない。
今日も学校の帰り道、その子に「負けた方がジュースを奢る」ということで、勝負しようと言われた。
いつも負ける僕は断ろうとする。
だけど、「俺が負けたらジュースにお菓子も付ける。それでどうだ?」と言われた。
買ったら、ジュースだけじゃなくてお菓子も奢ってもらえる。
僕はその勝負に乗ることにした。
その子がコインを飛ばす。
僕は悩みに悩んだ後、「裏」に決めた。
その子はパッと手を離す。
僕たちはその子の手の上のコインを見る。
「……どっち?」
「残念、表だ」
「あー、もう! また負けた」
仕方なく、僕はその子にジュースを奢る。
本当にコイントスが強いなぁ。
でも、いつか、絶対に買って見せるんだ。
終わり。
■解説
語り部は「見たことのないコイン」でコイントスをしているので、どっちが表か裏かわからない。
つまり、その子は、「本当は裏」なのに「表」と嘘をついている可能性が高い。
語り部はこの先、その子にコイントスで勝てることはないだろう。