学級新聞

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本編

俺は山奥の、電車もない田舎に住んでいた。
そんな田舎にある学校だから、クラスの人数もかなり少なかった。
そのせいか、クラスのやつらとは物凄く仲が良くて、下手をしたら家族以上の存在だ。
 
何をするにも一緒にやった。
祭りも、学校祭も、運動会も全部がクラス一丸となって頑張った。
田舎で何もないところだけど、クラスのやつらがいればそれだけで楽しかった。
 
でも、親の都合で引っ越すことになってしまった。
クラスのみんなは、都会に引っ越す俺に羨ましいと言っていた。
 
多分、あれは俺への励ましだったと思う。
正直、俺としては都会なんかにいかなくても、田舎でずっとクラスのやつらとバカやってるほうがずっと楽しい。
 
だけど、俺のそんな個人的な気持ちのせいで、親に引っ越したくないなんて言えるわけがなかった。
 
そして、ついに引っ越す当日。
みんなは授業をサボって、全員で俺の見送りをしてくれた。
さらに、学級委員長が俺に一枚の紙を手渡してきた。
 
学級新聞。
 
その週でクラスでの出来事を記事として書くというものだ。
どうやら俺のために作ってくれたらしい。
学級委員長は俺が引っ越した後、この学級新聞を作って送ってくれると言ってくれた。
 
すごく嬉しかった。
引っ越して、みんなと会えなくなっても学級新聞を読めばみんなのことがわかる。
まだ繋がっていられると思えた。
 
約束通り、委員長から毎週、学級新聞が届く。
みんなのことが書かれている。
俺はこの新聞を読むのが毎週の楽しみになっていた。
 
そんな中、新聞の記事の中にクラスメイトのおじいちゃんが事故で亡くなったことが書かれていた。
その人には俺もお世話になったから、落ち込んだりした。
 
それから数日後。
母親からクラスメイトのおじいちゃんが亡くなったと電話があったと聞いた。
お葬式にはいけないけど、電報は打つと言っていた。
 
やっぱり本当だったんだと思うと、なんだか気分が落ち込んだ。
 
そして、こういう不幸というのは続くものと良く言われている。
なんと、今度はクラスメイトが電車に轢かれて死んだと書かれていた。
 
気になったのは、名前が書いてなかったことと、今回で学級新聞が終わりだと書いてあったことだ。
 
なんでだろう?
 
それはともかく、今度こそはちゃんとお葬式に出たいとお母さんに言うつもりだ。
死んだやつには悪いが、葬式でみんなに会えるのは少し楽しみだ。
 
終わり。

■解説

クラスメイトの祖父が死んだことに対して、電話よりも先に学級新聞で届く方がおかしい。
もしかすると、その学級新聞は未来のことが書かれているのではないだろうか。
そして、なぜ、今回で学級新聞が終わりになるのか?
それはもう学級新聞を出す意味がなくなるからである。
亡くなったクラスメイトは『電車に轢かれて』と書かれている。
しかし、語り部が元いた田舎は『電車もない』はずである。
つまり、電車に轢かれて死んでしまうのは語り部ということになる。

 

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