運び屋

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本編

男は一流の運び屋である。
世界中のどんなところにも、どんなものも届けることができるという触れ込みだ。
 
例え紛争中の国でも侵入するし、例え違法な物でも断らない。
 
ある国の政府の重要書類も運んだことがあるし、貧困国の子供を運ぶという名目で誘拐することも平気でやった。
 
全ては金のため。
金さえ払えば、どんな物も運ぶというのが男のポリシーだった。
 
あるとき、男はあるカバンをニューヨークに運んで欲しいという依頼を受けた。
依頼を受けたのは、何度か違法な依頼をしてきた馴染みの人間だ。
 
しかも報酬は場所や物を考えると、かなりの法外な額だった。
 
男はいつも結構な無茶な依頼をこなしていることへのボーナスだと納得し、さっそくニューヨークへと飛んだ。
 
なんの障害もなくなんなく、目的地へと到着した。
 
場所はとある病院。
受取人がいる部屋へ行くと、医者らしき人間と、数人の黒服を着た人間がいた。
 
男はさっそく依頼されたカバンを渡す。
黒服がカバンを開くと、中は空っぽだった。
 
この後、男の姿を見た者はいない。
 
終わり。

■解説

男が運んだのは男自身。
この後、男は臓器移植のドナーとして解体されてしまった。
もしかすると、知ってはいけないことを知り過ぎたのかもしれない。

 

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