真夜中の事故

意味が分かると怖い話

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本編

その日は出張で遠くに来ていた。
 
取引先との重要な会議を終わらせ、ホテルでのんびりと過ごしていた。
だが、突然、次の日の朝からの会議に出て欲しいと連絡がきたので、深夜に車を走らせているというわけだ。
 
ゆっくりと過ごすつもりが長時間の運転を強いられている。
ドライブが好きなので、旅費を浮かせるためにも車で来ていたのが失敗だった。
やっぱり電車を使えばと考えるが後の祭りだ。
 
いくらドライブが好きだからと言っても、それは天気のいい昼間の話で、深夜の峠道なんて本当にごめんだ。
 
しかも、この峠道は『出る』との噂の場所である。
 
峠道なので街頭なんてほとんどなく、対向車や後続車も全くいないから、明かりと言えば自分の車のヘッドライトだけだ。
 
頼むから出るなよ。
 
そう祈りつつ、車を走らせる。
怖さを紛らわせるために、音楽を爆音で流しながら。
 
だが、峠の8合目付近だった。
不意に、流していた音楽が止まった。
 
USBに入れたものをループしていたから、曲が終わったから止まるなんてことはない。
 
嘘だろ。
 
運転しながらも、デッキを操作する。
が、そのときだった。
 
不意に、目の端に光が見えたから、慌ててハンドルを切った。
 
それは車のライトだ。
ヘッドライトではなく、赤の点滅した光。
つまりハザードランプだ。
 
間一髪、ぶつかることは免れた。
ハザードランプがなければ、完全にぶつかっていただろう。
付けてくれていて、本当に助かった。

ハザードランプを付けていた車は、どうやらガードレールに激突したようで、車の後部が道路に飛び出している状態だった。
つまりほぼ、真横になっている。
 
停車して、チラリとその車の方を見る。
本当はそのまま通過したい気持ちだったが、事故を起こした人も、こんな場所に一人で待つのは心細いだろうと思い、車の方へ向かった。
 
そして、すぐに違和感を覚える。
なぜなら、車の近くに誰も人が立っていないのだ。
 
おかしいと思い、車の中を覗き見る。
すると、運転席には頭から血を流した男が前のめりになっていて、ピクリとも動かない。
 
既に自分で通報したのかもしれないが、念のため、俺も警察と救急に通報した。
 
1時間ほど経ったころ、ようやく警察と救急が到着する。
俺も色々と話を聞かれえて、面倒くさいことになった。
やっぱり、あのまま通過すればよかったとも思ったが、どうやら、事故を起こした運転手は通報はしてなかったらしい。
俺が通報しなければ、発見は朝になっていただろう。
 
しかも、運転手は通報も虚しく、亡くなってしまった。
というより、警察の人の話では事故を起こしたときに、即死だったらしい。
 
……あれ?
ちょっと待ってくれ。
 
それだと、おかしくないか?
 
終わり。

■解説

事故を起こしたときに運転手が即死したのであれば、いったい誰がハザードランプを付けたのだろうか?

 

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