お父さんへのプレゼント

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本編

僕はお父さんの本当の子供じゃない。
スラム街で盗みに失敗して半殺しにされていたところを拾って貰ったのだ。
 
お父さんの周りの人は、お父さんがそんなことをするなんて珍しいなんて言う人が多い。
なんでも、お父さんは結構、悪い人らしい。
 
でも僕にはそんなことは関係ない。
お父さんは僕を大切にしてくれるし、僕に優しい。
僕にとっては世界で一番のお父さんだ。
 
お父さんは元々、お金持ちってわけじゃないのに、僕を拾ってくれた。
そのせいで、生活はとっても苦しい。
僕も働くとお父さんに頼んだが、お父さんは「お前はまだ子供なんだから」と言って勉強させてくれた。
 
だから、学校で、貧乏ってイジメられても全然、気にならない。
本当なら、僕なんかが学校に行けることさえもできないんだから。
こうやって勉強できるだけでも、お父さんには感謝しないといけない。
 
でも、お父さんは僕がイジメられてるってことに気づいて気にしているようだった。
だから、学校で必要な物は買ってくれたし、なるべく良い物を用意してくれた。
 
このお金はどうしたの、と聞いても「子供のお前は心配しなくていいんだ」と笑って誤魔化すだけだ。
 
あるとき、お父さんとお買い物に行ったとき、僕と同じくらいの子がオモチャを買ってもらって喜んでいるのを見かけた。
お父さんは僕に、「お前も、アレ、欲しいか?」と聞かれた。
正直、欲しいと思ったけど、欲しいなんて言ったら、お父さんは無理をして買ってきてしまう。
だから僕は、「もうすぐクリスマスだから、サンタに頼んでみる」と言った。
 
僕は良い子じゃないからサンタは来ない。
だけど、そう言っておけば、お父さんがオモチャを買ってくることはないはずだ。
 
そのとき、僕はあることを思いついた。
お父さんにはいつも買ってもらってばかりだ。
たまには僕もお父さんにプレゼントをしたいと思った。
だから僕は、お父さんはサンタにプレゼントを貰えるなら、何がいい?と聞いてみた。
 
「時計が欲しいかな。銀の懐中時計」
 
と言った。
 
もうすぐクリスマス。
お父さんが「今日は遅くなるから先に寝てなさい」と言われた日。
僕は町へと繰り出した。
 
人通りが少なくなるまで、路地裏の隅で隠れて待ち続ける。
町の明かりがほとんど消えた頃、誰かが路地裏を通りかかった。
 
僕は用意していたレンガの欠片で、そいつの後頭部を思い切り殴った。
そいつは倒れて、動かなくなった。
 
よく見てみると、そいつは覆面をしていた。
どうやら、どこかで盗みをした後だったらしい。
 
本当にラッキーだった。
結構、お金を持っている。
これなら、お父さんが欲しがっていた時計も買えるだろう。
 
さらにラッキーだったのは、そいつは僕が欲しいと思っていたオモチャも持っていたのだ。
お父さんに、サンタからオモチャも貰えたって言えば、きっとお父さんも喜んでくれる。
僕もお父さんもサンタからプレゼントを貰ったっていう、最高のクリスマスになりそうだ。
 
次の日、僕はそのお金を持って時計を買った。
 
そしてクリスマス当日。
僕はお父さんのベットの横に時計を置いておいた。
お父さんはきっと喜んでくれる。
そう思うと、嬉しくてなかなか寝付けなかった。
 
でも、そういえば、あの日からお父さんは家に帰ってきていない。
 
終わり。

■解説

語り部の父親は強盗だった。
語り部へのプレゼントを買った後に強盗をし、その帰りに語り部に襲われてしまった。
つまり、語り部は大好きな父親にプレゼントをするために、大好きな父親を殺してしまったことになる。

 

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