本編
小学校来の友人が最近、元気がない。
激痩せして、目も虚ろでいつも疲れたような顔をしている。
まるで幽霊にとり憑かれたような感じだ。
考えてみれば覚えがある。
あれは去年の夏休み。
遊びで心霊スポットと噂されている廃病院に行った。
確かに不気味だったけど、そのときは特に何かが起きたということはなかった。
その後も霊が付いてきたということもなかったし、友人もそんなことは言っていなかったはず。
でも、よくよく思い出してみれば、友人の両親が離婚したのもその頃だったような気がする。
もしかしたら、友人は知らず知らずのうちに呪われたのかもしれない。
両親の離婚はその呪いのせいなんじゃないだろうか。
俺も友人も霊感がない。
だから、とり憑かれても気づかなかっただけなんじゃないだろうか。
そんなことを思っている最中のときだった。
気晴らしに友人を釣りに誘っていたのだが、その友人がふらふらと歩き出して、海に落ちた。
それはまるで何かに引き寄せられるように。
俺は慌てて海に飛び込んで友人を引き上げた。
友人は眩暈がしただけと言っていたが、俺は霊に引き寄せられたのではないかと思う。
とにかく友人には濡れたままだと風邪をひくので着替えさせた。
着替えている途中も心配で、俺は友人に少し嫌がられたが着替えを手伝った。
でも、俺は手伝ってよかったと思う。
なぜなら、友人の体には無数の傷が付いていたのだ。
ひっかき傷や、何か鞭のようなもので叩いたような傷が付いていた。
それは背中にも付いていて、自分で付けられるような場所じゃない。
俺は確信した。
友人は悪霊にとり憑かれている。
この傷は霊によるものに違いない。
すぐに友人を連れて、地元の有名なお祓いをしてくれるところへ連れて行った。
そして、その霊媒師に友人を見てもらった。
だが、その霊媒師は笑って諭すようにこう言った。
「大丈夫です。この人には悪霊は憑いていませんよ」
その言葉を聞いて、俺はホッとした。
どうやら俺の考え過ぎだったらしい。
終わり
■解説
傷が霊の仕業ではなければ、「誰」が付けたのだろうか。
つまり、霊ではなく人間が付けたということになる。
友人の両親は離婚しており、引き取られた方の親に虐待を受けている可能性が高い。