〈前の話へ:ある富豪の我儘〉 〈次の話へ:近所のおばあちゃん〉
■本編
料理人の男は世界中を旅して、ありとあらゆる動物の肉を食べた。
そして、どんな肉でも、一口食べればなんの動物のどこの部位かまでを当てることができる。
男はまさに肉のプロフェッショナルだった。
その腕を買われ、男は三ツ星レストランの料理長としてスカウトされた。
男が料理長になってから、さらにお店の名前も有名となり、連日、男の肉料理を食べるために人々が殺到した。
しかし、男は自分が出す肉料理に満足していなかった。
そんなある日。
男の元に、ある業者がやってきた。
他の店には出していない、特別な肉を持ってきたのだという。
最初、法外な値段を提示され、男は鼻で笑って断ろうとした。
だが、その肉を一口食べ、懐かしい味に考えが変わった。
男はその業者にあるだけ買うと約束し、その業者との取引が決まった。
業者から仕入れた肉料理を出すようになってからは、さらに来店する客の数が倍増した。
世界中から予約が殺到し、半年先まで予定が埋まるほどだった。
それから2年後。
あるニュースが世界中で有名になった。
それはある犯罪組織が警察に捕まり、解体されたというニュースだ。
その組織は子供を誘拐していたのだが、その人数に世界が驚愕した。
それから1ヶ月後。
男の店のメニューから特別な肉料理が消えた。
終わり。
■解説
男が取引していた業者は犯罪組織のメンバー。
そして、仕入れていたのは子供の肉だった。
さらに、男は一口食べて、その肉が「人間の子供の肉」だったことがわかっていた。
ということは、男は以前、人間の子供の肉を食べたということになる。
一体、男はどこで人間の子供の肉を食べたのだろうか。
〈前の話へ:ある富豪の我儘〉 〈次の話へ:近所のおばあちゃん〉