■本編
私が住むマンションには、とても怖がりな男の住人がいる。
夜になると、極力、部屋から出ないようにしていて、もし夜に出かける必要がある場合は、ライトとお札を握りしめて出かけている。
その男を見て、失笑する人も多い。
私もついつい、意地悪してしまったりもする。
その日は残業だったのか、その男の帰りが夜の12時過ぎだった。
案の定、お札をカバンの中から出して、お祈りしながらエレベーターのボタンを押した。
エレベーターが1階まで降りて来るのを、今か今かと待っている。
そして、ついに1階まで到着し、急いでエレベーターに乗り込んだ。
男は自分の部屋がある4階のボタンを押す。
しかし、3階でエレベーターが止まった。
私が押したから、当然なんだけど。
すると、男は慌てて3階で降りてそこから階段で4階に上っていった。
相変わらず怖がりのようだ。
終わり。
■解説
語り部は幽霊